日本企業他が世界的規模でどのように医薬品開発を促進すべきかについて次の研究を行った。第1は,需要側要因として価格規制と売上額の研究開発に対する役割である。第2は,供給側要因としてのR&Dマネジメントである。第3は,R&Dの新しい社会的枠組みと資金調達方法である。具体的に以下の点を検討した。 1.将来の医薬品研究開発を可能とする資金調達の仕組みの検討。 2.医薬品の価格設定が,市場における医薬品R&Dの採算性に与える影響の検討。 3.効率的に医薬品研究開発を実現するための企業その他のR&Dマネジメントの在り方。 前年度までの研究によって次の重要性が判明した。第1は,企業のプロジェクト・マネジメントと地域を拠点としたオープン・イノベーションの関連である。第2は,価格抑制などの多様な要因が医薬品研究プロジェクトの経済的価値,医薬品企業のキャッシュ・フローを介して研究開発にどのように影響するかである。そこで本課題の2015-2017年度の研究期間を延長して,2018年度に次の研究を実施した。第1に,2010年度以降の医薬品開発のR&Dマネジメントにおいて実際にどのような傾向が生じたかを世界の医薬品承認データを分析した。第2に,代表的企業を対象とした事例研究を追加した。そこではプロジェクト・マネジメントとともに,M&A等,投資を重視した事例を検討した。さらに,R&D支出,特許等の成果指標を関連付けた投資理論にもとづく実証研究を行った。第3に,オープン・イノベーション,地域集積の二つを強調したモデルの整理を行い,併せてフランス・パリ地域を題材にした事例調査を行った。第4に,前年度までの価格と需要研究のデータを追加,再検討した。これらの結果,価格政策の影響が弱くなったものの,薬価制度としての医薬品費用抑制効果も減殺されたこと,日本のオープン・イノベーションの役割が限定的であることが判明した。
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