研究課題/領域番号 |
15K03528
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
熊谷 成将 近畿大学, 経済学部, 教授 (80330679)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | informal caregiving / loneliness / non-response bias / mental health |
研究実績の概要 |
論文「Distinct impacts of high intensity caregiving on caregivers’ mental health and continuation of caregiving」(Health Economics Reviewに掲載)において、私は、週あたり家族介護時間と家族介護者の健康状態を表す変数を用いて、長時間介護が介護者の精神的な健康状態に与える影響が、介護者の属性により異なることを明らかにした。その延長線上に位置して、論文「「中高年者縦断調査」における家族介護の非回答バイアス」(医療経済研究に掲載)において、私は、家族介護の有無の質問に対する非回答のバイアスを考察した。この論文では、回答者の精神的健康状態が悪いことが非回答と関連しており、女性の非回答が継続する傾向があることや、非回答者が脱落した標本において回答者に偏るサンプルセレクションバイアスが生じていることが示されている。身体的健康状態が悪い者や服薬もしくは通院している者ほど家族介護の質問に回答するが、婚姻歴がない者や精神的健康状態が悪い者は、家族介護について回答しないことが明らかになった。 また、内閣府「一人暮らし高齢者に関する意識調査」(2014年)を用いてKumagai(2018; 未発表論文)を作成し、一人暮らし高齢者の介護選好を明らかにした。この論文において、子がいない抑うつの一人暮らし高齢者ほど (1) 要介護状態になったときに自宅や親族の家で介護を受けたいと思っておらず、(2) 介護サービス従事者に主介護者になって欲しいと考えていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
データ利用申請の過程で想定外の遅滞に見舞われ、研究計画を変更せざるを得なかったから。 国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「生活と支え合いに関する調査」を用いて、家族介護者の主観的健康状態と家族介護経験の有無が、介護者自身の介護選好(どこで誰から介護を受けたいか)に与える影響を分析する予定であったが、社人研の情報調査分析部における事前相談の開始から2カ月半が経過した頃に、①クロス表のチェックが一度も行われていなかったことと、②待ち時間がさらに3カ月半以上であることを私が知った。厚生労働省並みの事前相談3カ月未満を織り込んでいた私は、その時点で、追加的な時間の浪費を避けるために上記データの利用を断念し、研究計画を変更せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
一人暮らし高齢者の介護選好を明らかにしたKumagai(2018; 未発表論文)を介護の国際会議で発表し、査読誌に投稿する予定である。他方、厚生労働省「中高年者縦断調査」(6回-12回)を用いて、熊谷(2018)が明らかにした、「家族介護の回答・非回答」と「精神的健康が悪い・悪くない」の間のシステマティックな関係が持続しているかを調べる。
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