研究課題/領域番号 |
15K03529
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大洞 公平 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (70388354)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 契約理論 / リーダーシィップ / シグナリング / マルチタスク問題 / 権限移譲 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、ミドルのリーダーシィップに関する契約理論モデルの構築を中心に研究を進めた。モデルの概要、及び、そこから得られる主たる結果は次の通りである。成果に応じて報酬が与えられるタスク1、及び、部下と協力することで組織全体に(立証不可能な)利益を生み出すタスク2にミドルが従事して、タスク2の生産性がミドルの私的情報であるケースを考えている。通常は、タスク2の努力を引き出すためにはタスク1のインセンティブを弱める必要があるが、それとは逆に、タスク1へのインセンティブを高めることがタスク2における努力をむしろ引き出す可能性があることを示している。これは、ミドルがタスク1の高い期待報酬を犠牲にしてタスク2の努力を高めることが、その生産性が高さを示すシグナルとして機能し部下の努力を引き出しやすくするためである。
この他に以下のような研究も進めた。(1)組織内におけるプロジェクト選択に関する情報取集、プロジェクト選択に関する権限の在り方、プロジェクトの実施に伴うモラルハザード問題を、情報伝達の構造の観点から分析するモデルの構築へ向けての準備を行った。なお、このモデルはプロジェクト選択だけでなく、組織の不正に関する洞察を得ることを目指した。(2)チームインセンティブと参照点依存型選好に関する論文の出版へ向けた作業を行った。(3)チームインセンティブと参照点依存型選好に関する理論結果を検証するための、実験研究のデザインに関して研究を進めた。(4)組織設計の問題に関する理論モデルの構築を進めるにあたり、日本企業の事例や官僚組織の特徴などに関する調査も進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、本研究の中心課題の一つとして掲げていたミドルのマルチタスク問題に関して、モデルの構築を行い、基本的な結果を得られたという点で、おおむね順調に研究が進展していると考えている。また、情報伝達とプロジェクト選択に関する研究に関しても、サーベイを行い簡単なモデルとそこから得られる結果の推測も行い、平成28年度に向けた準備も進んでおり、その点でも順調な経過をたどっていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、まず、平成27年度に進めた研究に関する論文の初稿を完成させ、その後、各種研究会、学会での報告を進めていく。次に、情報伝達とプロジェクト選択の問題に関する研究を進め、論文として完成させることを目指す予定である。
上記のような理論モデルを論文として完成するにあたり、企業の事例の調査を進める必要がある。平成27年度に引き続き、経営学などの文献の調査、また、専門家との議論を通して事例調査を進める。それを通して、理論モデルとその結果をサポートする事例を見つけることが論文の貢献度を高めるものと考えている。
最後に、組織やインセンティブ設計に関する理論研究の結果を検証する実験のデザインに関する研究も進める。それを通して、理論モデルの妥当性を十分考慮しながら研究を進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
主な理由として、物品費、その他の支出として計画していた図書、事務用品などの支出の多くを別の研究費より支出したため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費、または、旅費の一部として使用する予定である。
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