研究代表者は、金融商品市場における取引間隔(デュレーション)を時系列モデルの立場からモデル化したSCDモデルを研究してきた。日本の金先物市場を分析対象として、2017年度にはシミュレーション・スムーザとマルチムーブ・サンプラーを用いてSCDモデルをベイズ推定した。この結果は山形大学紀要に掲載されている。2018年度には、モンテカルロフィルタを用いてSCDモデルを推定した。この結果は山形大学大学院社会文化システム研究科紀要に掲載されている。モンテカルロフィルタは線形正規でない状態空間モデルの状態変数を推定する方法であり、適用範囲の広い推定方法である。状態変数とパラメータの推定を同時に行なうため、推定対象のSCDモデルを自己組織化状態空間モデルとして構築した上で推定した。さらに、デュレーションを分析する際の基本モデルであるACDモデルに閾値を組み込んだモデルを構築して、パラメータをベイズ推定した。 研究分担者は、日本銀行が公開しているアンケートデータの「金融リテラシー調査」を利用して、金融教育と行動バイアスが金融トラブルに巻き込まれる可能性に与える影響を分析した。研究成果を山形大学紀要において報告した後、さらに内容を発展させた上で数理社会学会において報告した。これに加えて、税率を一気に引き上げる場合の効果と徐々に引き上げる場合の効果を理論的に比較検討した上で、経済実験を行なって実験経済学の立場からも検証した。その結果は本学部のディスカッションペーパにまとめられている。
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