研究課題/領域番号 |
15K03536
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
熊本 尚雄 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (30375349)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 通貨代替 / 開発途上国 / 実質為替相場 / 負債のドル化 |
研究実績の概要 |
以下の2点に関する研究を行った。 (1)通貨代替が国内経済に与える影響について ラテンアメリカ諸国(チリ,メキシコ,ペルー)を対象に,Kumamoto & Kumamoto(2014)において提示した通貨代替型DSGEモデルに基づき,通貨代替が国内経済に与える影響について分析した。分析の結果,先行研究で用いられている代理的な指標(外貨建て要求払預金/(自国通貨建て要求払い預金+外貨建て要求払預金))で通貨代替の程度を測った場合には6%弱と低いメキシコにおいては,貨幣インデックスにおける自国通貨のウェイトと自国通貨と外国通貨間の代替の弾力性で規定されるその程度をベイズ推定により直接的に測った場合には約26%と高いことが示された。これは外国通貨に対する選好の僅かな変化が外国の金融政策ショックの自国経済へ及ぼす影響に大きく作用し,通貨代替の程度が国内経済に与える潜在的な不安定要因となり得ることを意味する。
(2)負債のドル化が経済変動に及ぼす影響について Kumamoto & Kumamoto(2014)にBernanke et al.(1999)にならったfinancial accelerator,およびGertler et al.(2003)等にならった負債のドル化を導入した通貨代替型DSGEモデルを構築し,負債のドル化がどの程度,経済変動に影響を及ぼすかについて分析した。その結果,負債のドル化は実質為替相場の変動によりfinancial acceleratorやdebt-deflationメカニズムを通じ,経済変動に有意な影響を及ぼすこと,また通貨代替の程度は負債のドル化以上に経済変動に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。これは中央銀行が金融政策を行う際には,通貨代替の程度を考慮することが重要であることを意味する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標として掲げていた上記(1)の分析(これまで分析を行ってきた分析対象国(アジア諸国)以外の国・地域を対象とした分析),ならびに平成28年度中を目標としていた上記(2)の分析(financial accelerator,および負債のドル化のメカニズムを導入した通貨代替型DSGEモデルの構築)を行い,一定の成果を得た。 また,それぞれの成果について,学会,研究会において発表し,有益なコメントを多々受けることができた。
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今後の研究の推進方策 |
学会,研究会における発表に対して受けた様々なコメントを反映させたモデルの修正,ならびに分析結果の解釈についての精緻化を連携研究者(東京経済大学・熊本方雄教授)と行い,雑誌への投稿を随時行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会・研究会で受けたコメントを反映させた修正作業のため、当初予定していた英語による論文校正を実施することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の当初予定していた英語による論文校正を実施する。また,「11. 現在までの進捗状況」において記した通り、当初の計画よりも進んでいる研究もあるため、これに関する連携研究者との打ち合わせ、投稿に際した英語のよる論文校正を実施する。
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