研究実績の概要 |
最終年度である平成29年度はこれまでの検討をベースにして以下のことを行った。第1は、企業の内部金融依存化と家計の外部金融依存化の要因およびマクロ経済に与える影響の検討(課題1および課題2)である。アジア・欧州地域を対象とした国内要因および直接投資などの企業への外国資本流入といった国外要因の検討について、昨年国際学会での報告した研究成果を改善し、ディスカッションペーパーの形にまとめた(Enya and Shinkai, 2018)。第2は、同様の検討課題(課題1および課題2)について、借入部門を区別した外国資本流入および国内信用のデータを用いて、アジア・欧州地域を対象とした分析を行った。国内の銀行貸付以外の企業への資金流入(外国からの流入も含む)が、代替的な効果を持ち、企業への国内銀行貸付の減少、個人への国内銀行貸付の増加につながったことを確認した(Sugimoto and Enya, 2017)。これまでの検討により、経済発展や国際的生産ネットワークの進展など企業部門の資金調達環境の変化によって、企業の国内銀行からの貸付依存度や個人の国内銀行からの貸付依存度が影響を受け、マクロ経済を不安定化させることを確認した。そして、マクロプルーデンス政策、資本規制、為替制度、産業政策などマクロ経済の不安定化を避けるための政策についての検討(課題3)い、検討したことをまとめた(塩谷,2018、Kohsaka, 2017)。これらの分析により、本研究課題の研究目的を達成することができた。
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