いくつかの新興国では、2000年以後、家計向け貸出が急激に増加している。多くの場合、家計向け貸出の増加は企業向け貸出の減少または停滞を伴っている。本研究の目的は、アジア地域の新興国を主要な対象として、家計向け貸出と企業向け貸出の近年の状況を調査し、これら貸出の増減を伴った国内金融システムの変化の構造的要因と将来の生産や所得に与える影響を実証的に検討することである。分析の結果、外国からの資本流入や経済発展プロセスの特徴が大きくかかわっていること、また家計向け貸出の増加は将来の生産低下や景気循環を増幅させる影響を持つことを確認した。これら分析結果を踏まえ、政策提言についても検討した。
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