研究課題/領域番号 |
15K03541
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
畠田 敬 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (90319898)
|
研究分担者 |
太田 亘 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (20293681)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 資本構成 / 資本構成の動学的トレードオフ / 模倣的な資金調達 / 法人企業統計調査 / 日経Needs Financial Quest |
研究実績の概要 |
法人企業統計調査の個票データ利用のための目的外使用申請の事務手続きを行い,次に,パネルデータを構築した.パネルデータ構築については,周防節雄・古隅弘樹・宮内環(2009,「法人企業統計調査と事業所・企業統計調査の統合データによる企業データベース:1983~2005 年」『統計数理』)が行っている.これを参考に,年次別調査票に加え四半期別調査票・調査名簿を利用し,同一法人の追跡をできる限り正確に行った.このデータ処理においては,法人名や所在地の文字情報を利用するなど様々な工夫を行った.特に,本研究では管理法人・低階層法人間の変遷もとらえてより正確なパネルデータを構築を行った.その一方で,日経Needs Financial Questによる同様のパネルデータ構築も行った.このデータベースは,法人企業統計調査のデータベースと異なり,そのほとんどが上場企業に限定されることになるが,その一方で,非常に詳細なデータを入手できることが期待される.従って,平成28年度から,これらの2つのデータベースから構築されたパネルデータを用いて,具体的な実証分析を行う. また,平成28年度の実証分析をスムーズに行うために,資本構成(資本構成の動学的トレードオフ,模倣的な資金調達)に関する先行文献の整理を行うとともに,米国の先行研究が主張するような負債比率に関する観測的事実が,構築されたわが国のパネルデータを用いた場合,どのような形で観察されるかについての整理を行った.具体的には,負債比率の産業間差異,産業内差異,企業内差異を,階層別かつ時間的な推移についての整理を行った.最後に,負債比率に影響を与える要因として,調査年数,企業規模,収益性,収益の変動率,平均法人税率,担保資産比率,有形固定資産比率などについても同様の整理を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
法人企業統計調査の個票データを利用するのための目的外使用申請の事務手続きに時間がかかってしまったが,年次ベースのデータばかりでなく,四半期ベースのデータのパネル化および両社のリンクを行うとともに,外れ値等数値のチェックを行った.また、分析を開始し、いくつかの基本的指標の分布について検討をした.また,事務手続きに時間がかかることは,比較的早い時期に想定できており,代替的な日経Needs Financial Questによるパネルデータの構築を行うことができている. 研究者間で密接な連絡を取っているが,本研究との周辺部分における研究に時間が割かれてしまった.それ故,各研究者レベルで,資本構成(資本構成の動学的トレードオフ,模倣的な資金調達)に関する先行文献の整理は行われているが,研究者間における統合的な整理はまだ十分にできていない.
|
今後の研究の推進方策 |
資本構成(資本構成の動学的トレードオフ,模倣的な資金調達)に関する先行文献の統合的な整理を行う.但し,より直近において企業が直面している問題を把握するために,法人企業統計調査の個票データの利用についても最近のデータベースに継続の申請を行う予定である.昨年度の知識を利用することで,スムーズなデータの構築を行えると思われる. さらに,研究分担者をリーダーとして,動学的なトレードオフ理論が日本企業の負債比率をどれほど説明できるかを分析する.動学的なトレードオフ理論では,柔軟な資金調達には費用を伴い,将来の資金調達不足に備えて,企業は,静学的なトレードオフ理論から導出される最適負債水準よりも低い水準を維持しようとし,最適負債水準への調整に時間がかかると思われる.従って,動学的なトレードオフ理論の下では,資金調達の柔軟性を持つ企業とそうでない企業で,負債水準や調整スピードが異なることが予想される.構築されたパネルデータを用いることで,資金調達の柔軟性と負債水準のそれらについての検証を行う. 研究代表者をリーダーとして,企業の資金調達の模倣行動を明らかにするために,企業の財務政策がそのライバル企業の財務政策に対してどのような影響を受けているかついての分析を行う.本研究では,システマティックな要因を取り除くことで,他の企業独固有の要因による影響を識別し,さらに,操作変数法による推定方法を活用することで,バイアスのない実証分析を行う.そして,企業の負債比率が他の企業の負債比率にどのような影響があるかを詳細に分析することで,近年における日本企業の低負債比率の現象とそれがもたらす問題を明らかにする. 外部の有益な意見を反映するために,研究セミナーを活用して意見交換を行い,可能な限り早い段階でDiscussion paperに纏める.また,Discussion paperをベースにして,国内あるいは海外で報告発表を行う.
|