マネーストック統計とマネーサプライ統計は過去に何度か定義変更が行われてきた。そのため、M1、M2、M3や広義流動性などの各指標については、一貫したデータを得ることはできず、不連続が生じている。このままでは、経済分析を行うときに不都合であるため、日本銀行は、M2とM3を例として具体的に接続する方法を提案している。 本研究は、M1統計量についても日本銀行が提案する方法で接続を行い、その問題点を検討し、適切なM1統計量の接続について考えることを目的としている。ゆうちょ銀行が民営化されたことにより、今までM1統計には入っていなかった郵便貯金がM1統計に算入されるようになった。郵便貯金の動きは複雑であり、日本銀行が推奨する単純な接続方法では、この複雑な動きを捉えることができず、郵便貯金の動きを考慮する必要があることを示した。 まず、日本銀行の推奨する方法で具体的にM1統計量を接続し、1955年から2017年までの接続計数を作成する。次に、郵便貯金の動きを考慮したM1統計量の接続計数を作成し、2つのM1統計量について比較を行い、2つの時系列の違いを分析した。その結果、2つのM1統計量は同じ時系列とは言えないことが分かった。そこで、日本銀行が推奨する接続方法を使ったデータを使用すると、実証研究に大きな支障が出ることを示した。例として、2つのM1統計量を使った貨幣需要関数の推定を行い、推定係数に大きな違いがあることを示し、日本銀行が提案する方法の問題点を指摘した。
|