アジアの銀行M&Aの長期パフォーマンスと銀行規制や株主(海外機関投資家)との関係について分析した。銀行規制については、強い金融規制はM&A後の長期パフォーマンス改寄与しているとの結論を既に得ている。このため、最終年度は、買収銀行の株式所有構造に焦点を当てて実証分析を行った。概ね論文は年度当初には出来ていた。そのため、いくつかの研究会(金融庁、青山学院大学、及びバーミンガム大学)や学会で発表し、コメントをもらいながらJournal論文に仕上げ投稿する作業を行った。その過程で、国内の別の研究者が新たに共同研究者に加わることとなり、具体的な投稿論文を決め、投稿準備のための修正作業を行った。 論文の具体的な結論としては、 ①海外機関投資家比率が高いと、欧州では銀行M&Aの成功確率が高く、アジアは逆の結果である。②アジアの伝統的な海外機関投資家(海外の銀行投資家)を除く、すべての海外機関投資家の比率が高いと、買収銀行は不良債権を削減できる。③アジアでは、投資ファンドの投資家比率が高いと短期的に買収銀行のROAを引き上げるが、しかし、長期的には引き上げ続けることは出来ずROAを引き下げてしまう。ファンド投資家が多いと買収銀行はコストを引き下げに成功する。④欧州では、ファンド投資家が多いと買収銀行はROAが引き上げられる。銀行等の伝統的な投資家が多いとコストが引き上げられてしまう。⑤つまり、長期的には、銀行等の伝統的な機関投資家が多いと、アジアではROAが下がってしまい、欧州ではコスト高になってしまう。海外の投資ファンド投資家やファンド投資家は、買収銀行のM&Aに対してプラスのパフォーマンスに寄与するのに対して、銀行投資家等の伝統的機関投資家は、マイナスの影響を与えてしまう、ということが、実証的に分かった。
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