研究課題/領域番号 |
15K03548
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
清水 順子 学習院大学, 経済学部, 教授 (70377068)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 貿易建値通貨 / 決済通貨 / 基軸通貨 / 人民元の国際化 / 通貨スワップ / 通貨政策 / アジア / 域内金融協力 |
研究実績の概要 |
最終年度である2017年は、通貨の役割の中でも交換手段に焦点を当てインタビュー調査を行った。7月から8月にかけては日本企業を対象に行い、9月から2018年2月までは清水が長期国内外研修中に客員研究員として滞在したAMRO(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office)を拠点として、アジア各国の金融機関や現地企業に貿易建値通貨・決済通貨の選択に関するインタビュー調査を行った。 日本企業を対象とした調査からは、中国との貿易において人民元取引が一部で拡大していることが確認された。また、AMROで行ったシンガポール、および周辺諸国での調査の結果、特にタイの周辺諸国でタイバーツ建て取引が着実に増えていること、アジア通貨危機の経験から企業の多くは外貨建て債務を増やさず現地通貨建て債券により資金調達を行っていること、日本円については為替変動リスクが高いことからあまり利用されていないこと、人民元利用はシンガポールなどの一部の国に限られており、依然としてドル建てが多いことなどが確認された。しかし、アジア各国のドルに過度に依存する現状に対する危機感も強く、新たに現地通貨建て利用を増やすという取組みもタイ・マレーシア・インドネシアの3カ国を中心に進められており、今後の成果が期待される。 研究成果である"Progress of Local Currencies' Trade Settlements in Asia"はAMROのウェブサイトに近日公表される予定である。また、清水がこれまで行ってきた日本企業の貿易建値通貨選択に関する研究をまとめた本の執筆作業が完了し、"Managing Currency Risk: How Japanese Firms Choose Invoicing Currency" がEdward Elgar社より近日出版される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究テーマであるドル基軸体制から脱却とアジア通貨を中心とした貿易決済利用の促進のための政策協調については、清水がAMROを中心に行ってきたアジア現地通貨の貿易決済利用促進に関する研究と合致しており、その点ではAMROからの資金援助もあり研究費を節約することができた。一方で、AMROを拠点として研究活動することにより、当初予定した以上に調査対象範囲をスリランカやカンボジアまでに拡大して、アジア新興諸国におけるドル化の実態について現地調査を実施することができた。こうした調査の拡大は、アジア諸国の中でもその経済発展度合いにより通貨利用の可能性にかなりの差があることが確認できたという点で大いに役立っている。 AMROでのアジア現地通貨利用の促進に関する研究は、2018年以降も継続研究課題となり、2018年4月より清水に加えて中国、および韓国の研究者も新たに参加し、AMROでの共同研究として続けることになった。またこれとは別に、財務省国際局でも昨年度より通貨に関する研究会が非公表で続けられており、清水はそのメンバーとしてアジアを対象とした研究成果を2018年5月に報告する予定である。 以上の理由により、当研究は2017年度内終了せず、現在も研究が継続されているが、研究成果は2018年末までにまとめられ、AMROの国際会議で報告される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
清水がAMROを中心に行ってきたアジア現地通貨の貿易決済利用促進に関する研究は、AMROでの継続研究課題となり、2018年4月より中国、および韓国の研究者も新たに参加した共同研究となった。2018年8,9月には中国や韓国の企業を対象としたインタビュー調査の実施を検討している。 2018年3月より7月末まで清水はNYのコロンビア大学ビジネススクールの客員研究員として研究を行っており、本研究課題に関する意見聴取などを行っている。3月に行われた南カリフォルニア大学での学会でも研究報告を行い、アジア通貨の域内貿易での利用促進に大きな関心が持たれた。研究報告の一部についてはジャーナルへの投稿が要請されており、実証分析などを追加して派生研究を行うことも検討している。 当研究は清水研究課題として始めたものだが、国際機関であるAMROおよび財務省内部の政策運営のために利用されており、通常の研究成果のようにジャーナルへの投稿などが難しい場合もある。しかし、本研究の目的であるアジアの為替政策に対する政策提言という面では、国際会議で研究成果が披露されており、大きな成果をもたらすものと期待される。AMROで4月より開始された中国、および韓国との共同研究については、最終的には2018年12月のAMROの会議で研究報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年9月より半年間清水がVisiting Fellowとして共同研究を行っていたAMROでは、本研究課題と関連するテーマで研究を行っており、一部の国へのインタビュー調査についてはAMROからの研究資金援助があったため研究費に余裕が生じた。 AMROでのアジア現地通貨利用の促進に関する研究は、2018年以降も継続研究課題となり、2018年4月より清水に加えて中国、および韓国の研究者も新たに参加し、AMROでの共同研究として続けることになった。またこれとは別に、財務省国際局でも昨年度より通貨に関する研究会が非公表で続けられており、清水はそのメンバーとしてアジアを対象とした研究成果を2018年5月に報告する予定である。 以上の理由により、当研究は2017年度内終了せず、現在も研究が継続されているため、さらなるインタビュー調査や結果報告の出張費として残った研究費は使用する予定である。
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