当研究においては、動的確率的一般均衡モデル(DSGE)を用いて、日本銀行が導入した3つの金融政策の、実体経済及び債券市場への影響を分析した。研究成果は理論的成果と実証的成果に分かれる。 まず理論的成果であるが、当研究では標準的DSGEにおいて、①債券を単なる安全資産金利としてではなくクーポン債としてモデル化し、②日本銀行及び銀行による国債の保有を明示的にモデル化し、③予算制約式を通して日本銀行と銀行及び日本銀行と政府を明示的に結びつけた点に貢献がある。 次に実証的成果であるが、これは2つに分けられる。第一に分散分解だが、ここでは①全要素生産性ショック、②政府支出ショック、③投資固有ショックという3つの実物ショックと、④政策目標短期金利へのショック、⑤超過準備金に対する金利へのショック、⑥マネタリーベース増加率へのショックという3つの金融政策ショック、計6つのショックを考察した。⑤のショックの債券価格への影響の分析を行った事が当研究の貢献である。名目債券イールドの分散は、⑤及び⑥で大部分説明できる事が判明した。また実質債券イールドの分散に対しても、①だけでなく、依然として⑥が説明力を持つことが判明した。第二に、インパルス応答関数だが、これは上記3つの金融政策ショックそれぞれに対して、実体経済及び債券イールドがどのように反応するかを考察した。ここでも⑤の債券イールドへの影響分析が当研究の貢献である。その結果、日本銀行による①短期金利を-0.1%にし、②長期金利を0%にし、③インフレ率を2%にして、④経済を活性化させるとの目的に対して、短期的には超過準備金利ショックが最もふさわしい事が判明した。研究代表者は2018年1月25日に横浜国立大学、2018年3月14日に高麗大学、2018年4月5日に東京大学、2018年4月10日に一橋大学で論文発表を行った。
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