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2016 年度 実施状況報告書

電子マネー普及が現金保有残高に及ぼす影響の検討

研究課題

研究課題/領域番号 15K03551
研究機関中央大学

研究代表者

藤木 裕  中央大学, 商学部, 教授 (90293969)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード現金需要 / 金融技術革新
研究実績の概要

本研究の目的は、電子マネーが流通することによって家計の現金保有残高がどの程度削減されるかを定量化し、その結果を踏まえたマクロ経済へのシミュレーションを行い、政策提言をすることである。
2015-16年度には、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」個票データを7年分用いて、(1)家計はどんな条件が満たされると日常的な支払いに電子マネーを利用するのか、(2)電子マネーを日常的な支払いに頻繁に利用する家計の現金保有残高は、現金を頻繁に利用する家計の現金保有残高よりどの程度低いか、試算を行った。この分析と並行して、クレジットカードを日常的な支払いに頻繁に利用する家計の現金保有残高に関しても同様の分析を行った。
分析によれば、電子マネーやクレジットカードを日常的な支払いに頻繁に用いる家計は、日常的な支払いに現金を頻繁に用いる家計と比べると、所得水準が高く、若年層で、人口の多い地域に住んでおり、金融機関の選択に当たっては手数料が低いことを重視する可能性が高い、といった特徴があることが分かった。
次に、電子マネーやクレジットカードを日常的な支払いに頻繁に用いる家計の現金保有残高は、日常的な支払いに現金を頻繁に用いる家計よりも、単身世帯の場合、他の条件を一定として低いことが分かった。
これらの結果をマクロ経済に当てはめ、シミュレーションを行うと、日本中の家計が今後金融機関の選択に当たって手数料が低いことを重視するようになった場合、日本全体の現金需要が減少することが予想される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

家計はどんな条件が満たされると電子マネーやクレジットカードを利用するのか、との点については、頑健な統計解析の結果が得られた。
個別家計の現金保有に対する影響については、電子マネー、クレジットカードに関する研究のいずれでも、単身世帯においては現金保有残高が低い傾向がみられた。一方、2名以上世帯においては電子マネーに関しては効果なし、クレジットカードに関しては現金削減に関する弱い証拠が得られた。
こうした結果を踏まえて、マクロ経済に関するシミュレーションは、現金削減効果がはっきりと出たクレジットカードに関する分析に限って行うことに予定変更した。

今後の研究の推進方策

電子マネーに関する研究は、2017年4月のドイツ連邦準備銀行主催の現金利用に関する国際会議で発表し、会議でのコメントを踏まえた改訂版を会議議事録として出版することで完成する予定である。
クレジットカードに関する研究は、2017年6月のエコノメトリックソサエティ・アジア会合(於香港)、国際応用計量経済学会世界大会(於札幌)での論文発表が許可されたほか、8月のシンガポール・エコノミック・レビュー主催会議(於シンガポール)での発表を申請中である。これらの国際会議で得られたコメントを踏まえて再度改訂を行い、年度内に専門雑誌に投稿する予定である。

次年度使用額が生じた理由

英文校閲費用が予想比下振れしたため。

次年度使用額の使用計画

専門雑誌投稿のための英文校閲費用に充当する予定。

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公開日: 2018-01-16  

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