研究課題/領域番号 |
15K03554
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
平木 多賀人 東京理科大学, 経営学部経営学科, 教授 (50208815)
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研究分担者 |
Liu Ming 国際大学, 国際経営学研究科, 教授(移行) (70624675)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | グローバル投資 / ホームバイアス / 国際ファイナンス / 投資信託 / パフォーマンス評価 / 機関投資家行動 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は日・米・欧の主要先進国で組成された国際投資信託(オープン型グローバルファンド)にどのような運用上の特性があるか、近年利用可能になったファンドレベルでの銘柄保有(holdings)データを通して解明することにある。第1の実績としては、本年度国内外の学会で発表し、現在トップジャーナルに投稿中の, Hiraki, Liu and Wang, "Do Global Funds Exhibit Home Bias"が挙げられる。米国ファンドが分析の中心であるが、投資対象は新興国を含むグローバル株式である。最も興味ある発見として、運用担当者(マネジャー)の国際教育背景やプロフェッショナルキャリアがファンドの保有資産の内外比率(いわゆるhome bias)と運用パフォーマンスに有意に係る点である。海外教育経験者やMBA所有者がマネージャーになっている場合には、委託投資家への価値創造の観点においてスキルがあると評価さてよい、との結果が得られている(つまり、バイアスは問題にならない)。第2に機関投資投資家としてのグローバルファンドの役割をわが国IPO(新規公開株)市場に焦点をあてて分析した成果がある。その1編に、昨年度以来国内学会で発表したHiraki, Ito, Liu and Honda, "How Do Financial Conglomerates Determine Underwriting and Allocation of IPOs" がある。この論文は現在投稿に向けて現在最終校正中にある。第3の成果はわが国において日・米・欧を母体とするグローバルファンドの投資行動パタンーンとその効果に関するものである。彼らがどのように資産配分を行い、どのような成果を投資家にもたらしているかを、これもファンドレベルでの銘柄保有に焦点を当て対し、ユニークな研究としてほぼ完結した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は日・米・欧先進国で組成された国際投資信託(オープン型グローバルファンド)にどのような運用上の特性があるかを、近年利用可能になったファンドレベルでの銘柄保有(holdings)データを通して解明することである。この観点で、主に米国系のグローバルファンドの分析から開始し、共著論文1点を現在投稿しているところである。来る最終年度にはほぼ確実にジャーナルでの刊行できる。残りの2点の論文の1つ(国内IPOにおける投資信託への配分と国際機関投資家の役割)は投稿間近の状況であるが、研究目的の本流にに位置づけるにはやや無理がある(副産物的)成果物である。質的には優れているが、この観点でではその全体への貢献は割り引かねばならない。最後の論文は非常に目的に即した国際比較実証分析論文であるが、はまだ行わなければならないパフォーマンス特性の細部分析が残されている。本課題の最終年度ではこの未達成部分は十分達成可能と考えられる。したがって、全体としてはおおむね順調に進展しているいえる。 当初においては、日・米・欧のグローバルファンドのholdingsデータを新規に獲得すれば分析上十分であると想定していたが、運用するマネージャーの属性データなど個別性の高いデータが追加で必要になる局面が2年目から恒常的に発生してきた。こちらへの対応が予算的にも困難をきたすことになり、内容的に多少の妥協を余儀なくされたきらいがある。日・米・欧のグルーバルファンドの特性分析を同時的に扱う分析にはまだたどり着いてない。この点は最終年度における残された課題とししたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のステータスは次年度で最終化させる必要があるものである。上記3論文のうち1点は完成しており、2点目は投稿準備最終段階、そして3番目のものは分析をほぼ終えドキュメンテーショーンの最終段階にある。ジャーナルへの投稿から最終審査・掲載許諾まで半年から1年を予定しているので、3年間のトータル期間を通して予定した研究成果をあげることが可能と思われる。投稿段階に入るので、改定や追加分析などへの対応をその状況に応じて柔軟かつスピーディーに対処していく。 研究実績の概要と現在までの進捗状況で述べたように、3つの個別論文ではミクロ的成功を収めているが、その統合において不十分かつ未達成である。サブプロジェクト間の統合で論文以外の出版物、例えばモノグラフかかさばらない書籍の出版を見据えたい。また、3サブ分野をデータの同時使用と統合仮説の同時分析を行、ショートペーパーとしてジャーナルでの発表も目指したい。 研究課題の副産物的な位置づけを与えた国内IPO市場におけるにおける投資信託特に国内外の機関投資家の役割に関する興味深いテーマを、本課題終了後にも(新規課題として)拡張研究としてさらに追跡していく準備にも入る予定である。この分野においては主に引き受け(underwriting)に焦点を当てる研究が世界的に行われてきたが、ここでは新規公開株の配分(特に国際的配分)を重要を移行させてた新領域として研究を推進していく。わが国においても、事業創造とベンチャー企業の育成において、内外の機関投資家との接点がクローズアップされる日が近いうちに到来するものと思われる。本研究課題はそうした未踏破の新課題・新領域への下準備となるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の実支出(A)と当該年度の所要額(B)との差は微少であり、ほぼ忠実に予算を実行している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度であるが、分析のアップデートなどデータ管理上継続して同じ大学院学生をアルバイトとして雇用する(年間30万円程度)。残額のうち約30万円を追加データの購入に充当したい。さらの10万円弱の予算をジャーナルへの投稿費用に充てる予定である。
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