研究課題/領域番号 |
15K03556
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆康 明治大学, 商学部, 教授 (60361888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金融政策 / 資産価格 / 不動産投資信託 / 金利 / 株価 |
研究実績の概要 |
(1)REIT市場と株価、金利の分析 アベノミクス導入後の2年間に焦点を当てて、株価と金利が日本のREIT市場に与えた影響を検証した。結果は海外のREIT市場を分析した多くの先行研究と一致するものとなった。株価の上昇がREIT市場に正の影響を与えるとの結果は、富効果が成立し、株価上昇がREIT市場の上昇につながることを示す。Kapopoulos and Siokis(2005)などは、不動産への投資と株価の関係は富効果であらわされると指摘している。金利の上昇がREIT市場に負の影響を与えるとの結果は、金利の上昇がREIT市場の下落につながることを示す。REIT投資法人の資金調達は借入金比率(LTV)があるレベルに達するまで、借入という形で行われる。He et al(2003)などが示すように、不動産セクターは資金調達として、長期の負債に依存している。この点は、満期が長くなれば長くなるほど、負の係数は大きくなるという本分析の結果と平仄を合わせている。 (2)量的・質的緩和政策の補完措置の分析 日銀が2015年12月18日に導入を決めた量的・質的金融緩和政策の補完措置が、金融市場に与えた短期的な影響を検証した。日銀の黒田東彦総裁は、2015年12月下旬から2016年1月上旬にかけて、積極的に情報発信行ったが、中国経済に対する先行き不安や原油価格の下落などの外部環境の悪化を背景に、補完措置は導入の1カ月において株価やREIT、ドル円為替レートに対するプラスの効果はなかった。一方、平均残存期間を現在の7年~10年程度から、7年~12年程度に長期化するという対応とリスク回避モードの高まりを受けて、より満期の長い国債利回りや金利スワップレートが低下する形で、イールドカーブがフラット化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要にあるように、当初予定の(1)REIT市場と株価、金利の分析に加えて、(2)量的・質的緩和政策の補完措置の分析を行った。また、(1)に関しては国際コンファレンスで報告した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には、日銀が買入を実行した日にREIT市場はどのように反応したのかを検証する。平成29年度には、日本のREIT市場が海外のREIT市場に影響を与えたのか、あるいは、日本のREIT市場が海外のREIT市場から影響を受けたのか、を検証する。また、平成29年度には、平成27年度から平成29年度の研究から得られた分析結果をまとめて、非伝統的金融政策とREIT市場に関する学術的な貢献に加えて、実務的なインプリケーションを考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費を利用した海外出張(研究報告)が1回となったため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
図書などの購入に加えて、今年度は科研費を利用して海外出張(研究報告)を2回実施する予定である。
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