研究課題/領域番号 |
15K03556
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
伊藤 隆康 明治大学, 商学部, 専任教授 (60361888)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金融政策 / 資産価格 / 不動産投資信託 / 金利 / 株価 |
研究実績の概要 |
(1)日銀がREITを購入した日における、REIT市場の反応を分析した。日銀が2010年10月5日に包括緩和政策を導入し、リスクプレミアムを和らげて、資産価格を上昇させるために、REITの買入れを行うことを決定した。日銀が初めて市場からREITを購入したのは、2010年12月16日で、購入金額は22億円であった。日銀は前場の市場でREITの価格が下落したことを確認して、その日の後場にREITの買入れを実行していた。これは短期的にREIT価格を下支えしようという意図の表れである。また、こうした意図に基づいて日銀がREITの買入れを実行した結果、短期期には買入れの効果があったと言える。 投資家の観点からは、午前の取引でREIT価格が大きく下落した場合、前場の終了間際にREIT関連のETFなどを購入すれば、その日の後場に上昇する可能性が高いことが示唆される。この分析は、東証REIT指数を用いて、REIT市場全体の動きを対象にしている。日銀が買入れていると考えられるREIT個別銘柄を検証することで、日銀の買入れ効果をより詳細に検証できる可能性がある。この点は今後の課題としたい。 (2)マイナス金利政策の導入が金融市場に与えた短期的な影響を検証した。導入決定の3カ月後と6カ月後において、中長期ゾーンを中心に国債利回りや金利スワップレートが大幅に低下した。日本国債5年物と10年物や金利スワップ5年物までが、マイナス0.1%を下回る水準まで低下した。一方、TIBOR3カ月物と6カ月物も弱含んだが、プラスの水準を維持した。6月24日に英国の国民投票でEU離脱派が多数を占めたことでリスクオフ・ムードが強まったことも、中長期ゾーンの金利低下要因である。こうした状況の下、REIT相場は上昇したが、株式相場は下落した。また、ドル円レートはドル安・円高が進み、円高進行に歯止めがかからなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は(1)REIT市場と株価の関係、(2)日銀が採用した量的質的緩和の補完措置を分析して、2本の論文を発表した。平成28年度は、(1)日銀がREITを購入した日における、REIT市場の反応を分析し、有益な結果と政策的なインプリケーションを得ることができた。この分析結果を英語にして、海外誌への投稿を準備中である。(2)マイナス金利政策の導入が金融市場に与えた短期的な影響を検証し、論文を1本刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、日本のREIT市場と海外のREIT市場との連動や相互作用を分析する。また、用途別REIT指数と金利や株価との関連も分析する。平成27年度~平成28年度の分析をベースにして総括を行った上で、日銀の金融政策とREIT市場に関するインプリケーションを導き出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
科研費を利用した海外出張(研究報告と情報収集)が2回となったが、大学からの助成金を一部利用したため。
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次年度使用額の使用計画 |
科研費のみを利用して、海外出張(研究報告と情報収集)を2回行うことに加えて、計量分析ソフト等を購入するため、全額を使い切る予定である。
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