日本の用途別REIT市場(オフィス、住宅、商業・物流)に焦点を当てて、連動性とトランスミッション効果を非定常時系列モデルで検証した。その際に、金融政策レジュームにしたがって、標本を2分割した。1つ目は2010年2月26日から2013年4月3日で、日銀は包括緩和政策を実施していた。2つ目は2013年4月4日から2017年9月20日で、日銀は量的・質的緩和政策とマイナス金利政策を導入していた。分析に用いたデータは東京証券取引所に上場されている、日次ベースの東証用途別REIT指数(オフィス、住宅、商業・物流)である。分析に用いた手法は、単位根検定(Augmented Dickey/FullerとPhillips/Perron)、Johansenの共和分検定、Toda/Yamamoto(1988)のGranger因果性分析である。 分析の結果、包括緩和政策の時代には、3つのREIT市場は連動していなかった。また、用途別REIT間でのトランスミッション効果も限定的であった。一方、量的・質的緩和政策とマイナス金利政策の時代には、3つの用途別REIT市場は連動して推移し、用途別REIT間でのトランスミッション効果も大きかった。包括緩和政策の時代には、リーマンショックや東日本大震災などの影響で、不動産市場やREIT市場は低迷した。一方、量的・質的緩和政策とマイナス金利政策の時代には、強力な金融緩和の影響もあって、不動産市場やREIT市場は活況となった。こうした状況の下で、3つの用途別REIT市場は相互に影響を強めながら連動して推移したと考えられる。
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