研究課題
最終年度は、外国為替相場が日本の消費者物価に与える影響を調べている。その背景には、アベノミクスをきっかけとした大幅な円安が日本の物価に影響を与えているであろうことが指摘されていること、日銀がインフレーションターゲット政策でインフレ率を2%にすることを目標にしているにも関わらずその達成が難しいことがあげられる。本研究の特徴は第一に、使用する日銀の輸入物価指数に正確に一致するウェイトを用いた名目実効為替レートと企業価格指数を構築しているところである。これまでの同種の研究は、名目実効為替レートとして日銀が作成している代表的な名目実効為替レートか、あるいは、大まかに産業構成を一致させた名目実効為替レートを用いていたが、本論文では、日銀の輸入物価指数の産業分類と同様に関税輸入データを構成しなおしてウェイトを算出し、より正確な名目実効為替レートを作成している。第二に、推定手法としてTVP-VAR(時変パラメータ自己回帰分析)を用いることで、時間を追ってパラメーターがどのように変化するかをとらえている。第三に、外国為替相場からコアCPIへの直接的影響のみならず輸入価格、国内企業価格といった段階の分析を行い、また産業別の影響を分析しているところである。主な結果は、2010年くらいからは、わずかではあるが円安のコアCPIへの影響がみられるということである。その影響は外国為替相場の1%の円安に対してわずか0.02%のインフレ率上昇というものだが、例えば2012年には年率でみても25%ほど円が安くなったので、0.02%×25%にあたる0.5%程度のインフレ押上効果があったと考えられる。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件、 査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
フィナンシャルレビュー
巻: 136号 ページ: 118-143
Discussion papers , Research Institute of Economy, Trade and Industry (RIETI)
巻: 19078 ページ: 1-30