研究課題/領域番号 |
15K03560
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
久保 克行 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (20323892)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コーポレートガバナンス / ステークホルダー / 株主重視 / 雇用 / リストラクチャリング |
研究実績の概要 |
業績が悪化した企業は雇用を削減するであろう。ただし、どのくらいの業績変化でどのくらいの雇用削減を行うかは企業や時期によって異なるはずである。そこで、業績と雇用削減の関係に変化があったかについて実証的に分析している。サンプルとしては1988年から2011年の上場企業552社のデータを用いている。分析に際しては、特に第一期(1988-1999)と第二期(2000-2011)に違いがあるかに注目した。もしも、第二期の企業が株主重視の傾向を強めているのであれば、業績悪化に伴い雇用を削減する傾向が強くなるであろう。 このサンプルを分析することで、いくつかの興味深い事実を得ることができた。まず確認できたことは、日本の大企業が雇用を大きく削減しているということである。このサンプルは、同じ552社について1988年から2011年までのデータをみている。1988年には、この552社全体でおよそ226万人が雇用されていたのに対して、2011年時点では174万人に減少している。すなわち、24年間でおよそ50万人の雇用が失われていることがわかる。なお、ここでは純粋持株会社に移行した企業はサンプルに含まれていない。これらのサンプルは29の産業に分類されているが、29産業中24産業で雇用が減少している。特に製造業はほとんどの産業で雇用が減少している。 この結果は、日本企業の行動が変化していることを示している。さらに、この結果は、日本企業が株主価値を重視するように変化しているという考え方と整合的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画時に想定したデータセットの整備を行い分析を行うことが可能となっているため。
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今後の研究の推進方策 |
日本企業の行動に大きな変化があったという考え方のもう一つの背景がコーポレートガバナンスの変化である。具体的には外国人持株比率の増加、株式持合の減少、企業銀行関係の変化、取締役会の変化などである。これらの変化は株主の力を強くし、従業員と企業の関係を変化させると考えることができる。 今後は、これらのコーポレートガバナンスの変化が企業の雇用削減行動にどのような影響を与えたかについて実証的に分析することを目指す。さらに、現在までの研究を踏まえ、ワーキンペーパーとして完成させることも目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な支出を行ったところ、3000円程度の端数について、次年度に使用することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の支出として、本年度の予算と合わせて使用する。資料の購入にあてる予定である。
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