データの収集と分析に必要な変数の作成作業を行った。また、日本企業をサンプルとして、株式所有構造が企業行動やその成果に与える影響についての分析を行った。 まず、機関投資家の株式保有に関連するデータの収集を継続して行った。機関投資家の株式保有に関しては、各機関投資家の株式保有比率や各機関投資家のタイプの違いなどのデータを収集した。さらには、株主のタイプの違いによる影響の差を検証する目的で、法人企業などインサイダー株主として分類される株主の持ち株比率のデータも収集した。 分析面では、機関投資家などによる株式の所有が企業行動やその成果に与える影響について、日本企業をサンプルに実証分析を行った。具体的には、株式所有比率と研究開発投資やその成果の間に関係があるのか、などについて分析を行っている。研究開発投資の成果については、多くの先行研究と同様に、各企業の取得した特許データを用いて評価した。現時点では、機関投資家の株式所有比率など株式所有構造が研究開発投資やその成果に一定の影響を与えている可能性があることが分かっている。例えば、機関投資家の株式所有比率が高い企業ほど、研究開発において高い成果を出している可能性が確認された。以上の結果は、他の国のデータを用いた先行研究の結果とも一致している。これらの結果が頑健なものか、どのようなメカニズムによってこの結果を説明することができるのか、などについて明らかにすることが今後の課題である。
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