本研究は、宮城県柴田郡村田町の諸旧家を対象として幕藩制期から産業革命期に至る地方商人の経営展開をその基盤となった全国-地域の諸経営間の関係構造に着目しながら考察した。幕藩制期に村田商人群は、特産の南仙紅花及び仙台大豆を出荷品として、仙南地方を代表する広域商業を展開した。幕末開港前後から生糸取引に転換し、横浜及び京都西陣への生糸出荷、洋物引取、紡績糸の卸商などで経営を発展させた。産業革命期までに土地集積・有価証券投資を活発化し、商人資本として資本主義化に貢献した。村田商人群は内部に経営格差を含みつつ群としての全体利益を組織化し、地方名望家群として仙南地方の経済発展と地域統合に役割を果たした。
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