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2015 年度 実施状況報告書

世界石油産業の構造転換と国際石油企業の事業展開ー1980年代初頭以降を対象として

研究課題

研究課題/領域番号 15K03567
研究機関埼玉大学

研究代表者

伊藤 孝  埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (00151514)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード原油生産 / 天然ガス生産 / サウジ・アラビア / アラスカ / 北海 / 大水深海域 / メキシコ湾 / 西アフリカ
研究実績の概要

平成27年度の課題は,1980年代初頭以降のエクソン社(現エクソンモービル社)による原油と天然ガスの獲得活動の解明である。その主な要点は以下の通りである。
第1に,エクソン社は,1970年代半ば以降,ヴェネズエラで現地政府によって国有化された油田,原油生産施設等から産出される原油を,1980年代半ば頃までであるが,特別な割引価格で買い取ることが可能となったことである。また,1980年に一切の利権を失ったサウジ・アラビアでは,これ以降も継続的に原油を買い取る事が出来,これは,今日においても基本的に大きな変化はない。
第2に,アラスカ,北海が,1980年代初頭以降,エクソン社の有力な原油(後者については天然ガスを含む)の生産拠点に転じたことである。前者のアラスカでは,プルドー・ベイの油層への水などの圧入(2次回収あるいは3次回収)によって,同油田の可採埋蔵量が,2000年には約100億バレルから130億バレルに増加したこと,1987年に,アラスカ油田の沖合にある北極海(ボーフォート海)に所在する油田(可採埋蔵量3億5000万バレル)から原油の生産が開始されたこと,これらが特筆される。
第3に,1990年代初頭頃から着手された,大水深海域(deep-water)と呼ばれる,水深300メートルを超える海洋(深海部)での探鉱活動である。これがアメリカのメキシコ湾では,90年代後半に生産に結実し,同じく西アフリカ(アンゴラ,赤道ギニア,ナイジェリアなど)の沖合でも90年代後半には大油田の発見に至ったことである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

資料の収集面で大きな進展があったことが重要である。
エクソン社(現エクソンモービル社)の株主向け年次報告書をはじめ,各種の公表資料が得られたこと,アメリカ連邦政府の内務省の各種報告書を,同省の担当官のご厚意により,多数入手できたこと,などがあげられる。
さらに,日本国内に所在する技術専門会社などから,油・ガス田の探鉱方法などについての技術的な指導を得られたことが,資料の理解・分析を容易にする一因でもあった。
以上の理由により,本年度の課題の遂行は,ほぼ順調に進展したと言える。

今後の研究の推進方策

平成28年度は,当初の計画通り,第1に,アメリカをはじめとする各国での石油製品の生産と販売,市場支配の実態について解明する。
世界の石油消費は,「第1次石油危機」(1973年)以降,原油と製品の価格高騰を背景に,相対的に,年によっては絶対的に減退した。市場の低迷,とりわけ重油消費の顕著な減退によって,エクソン社など国際石油企業は,80年代初頭頃までには,かつての成長期に形作られた事業構造の抜本的な改編を余儀なくされた。製油所,製品販売網などの整理・統廃合,処分などがなされたのである。今日のエクソン社の製品生産・販売構造の原型は,基本的には80年代に形成されたと考えられるのである。
第2に,石油・天然ガス以外の分野へのエクソン社による事業の多角化の実態とこの活動に含まれた問題点の解明,である。1970年代半ば以降,エクソン社は,石炭,銅,ウランなどの鉱山業のみならず,本業とは大きく異なる不動産事業(土地開発など),事務用機器(タイプライターなど),産業用機器の製造などにも着手し,事業の多角化に一大投資を行った。しかし,同社は,90年代初頭頃までには,これらの大半を処分したのである。これらの諸活動の実態,エクソン社の経営判断に見られた誤りなどを解明する。
以上の課題を遂行するために,昨年度と同様にアメリカ,イギリスなどでの資料収集を行う。

次年度使用額が生じた理由

当初予定した旅費の支出が少なかったことが主たる要因である。

次年度使用額の使用計画

1270円の残額であり,平成28年度の旅費ないし物品費に組み込む予定である。

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公開日: 2017-01-06  

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