2018年度の研究成果を引き継ぎつつ、秩序経済学の様々な角度からの諸論考を捕捉・整理し、今日的コンテクストにおけるその意義について考察を深めた。その成果として「ドイツ・ネオリベラリズム研究の今日的展開とその意義」と題する論点をめぐっての論考を『歴史と経済』(政治経済学・経済史学会誌)第246号において発表した。なお、ここでいうネオリベラリズムとは、言うまでもなく戦間期ドイツ発祥の積極的(秩序政策的介入を含意した)自由主義のことである。そこではとくに「社会的市場経済」や「社会国家」についての我が国での理解の再考を促すことを意図しており、財政面の問題を社会国家の限界として把握することの一面性と、その多元的な理解の余地を指し示すものである。またフライブルク大学の教員とともに立ち上げた共同研究ユニット"How Tradition of Economic Thinking Shape Economic Policy"を通じて秩序経済学研究の最前線とつながりつつ、経済秩序思想が現実の政策に歴史的にどのように経済・社会政策に反映されてきたのか、また21世紀という今日の状況の脈絡において積極的自由主義という社会国家のあり方にどのような可能性があるのかの考察を進め、十分な打ち合わせを経た後、年度末には上記共同研究の成果を公表する国際シンポジウムの一報告'Diversity of Development of "Ordnungsoekonomik" and Future of "Sozialstaat"'(「秩序経済学の多様な展開と社会国家の可能性」)として口頭発表してその成果を共著書の所収論文として公表し、また研究代表者の所属部局百周年記念公開国際学術講演会において、本研究課題の成果を含んだ「ドイツ型『社会国家』---その理念と実践」と題する講演も同時期に実施予定であった。しかしその双方とも、COVID19対策で無期限順延の状態である。
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