研究課題/領域番号 |
15K03576
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
澤井 実 南山大学, 経営学部, 教授 (90162536)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸素工業 / 溶接 / 溶接材料商社 / 産業ガス産業 / 海外メジャー |
研究実績の概要 |
切削・研磨、鍛造などと並んで重要な金属加工技術の一つである溶接、切断技術の約1世紀にわたる展開過程を経営史的・技術史的に考察するために、(1)酸素工業、(2)溶接棒、(3)溶接機材・溶断器材、(4)溶接材料商社の4つの研究対象に関する基礎資料・文献の収集を行い、戦後から現在に至る経営資料を重点的に調査した。 戦後の酸素工業の展開に関しては、液体酸素技術の導入、オンサイトプラントの展開について検討した。鉄鋼業に代表される巨大な酸素消費者が自家設備を設置して酸素を大量に自家生産したため、酸素専業メーカーは「限界生産者」と呼ばれ、その地位からの脱却を目指してオンサイトプラントが展開されることになる。しかし、液体酸素設備の導入およびオンサイトプラントの展開には多額の資金を要したため、酸素メーカーは液体酸素メーカーとそれ以外の充填会社に二分される結果となった。 高度成長が終焉すると、これまでのような成長は見込まれなくなり、酸素よりも窒素が需要されるようになり、同時にアルゴン需要も急拡大した。酸素工業は産業ガス産業に変容したといえよう。一方、1990年代以降になると世界的にも産業ガス産業の集約化が進んだが、その波は日本にも及んだ。 1993年から始まった業界再編によって、従来の主要8社体制は2007年には主要3社(大陽日酸、日本エア・リキード、エア・ウオーター)と溶接材料商社から出発した岩谷産業の4社体制に変化した。しかし、首位企業の大陽日酸と海外メジャーとの格差は依然として大きく、研究開発力、エンジニアリング能力、マーケティング面での強化が課題となっていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、(1)酸素工業、(2)溶接棒、(3)溶接機材・溶断器材、(4)溶接材料商社の4つの研究対象を設定している。戦後の酸素企業各社の経営資料の収集に関しては、予想を上回る成果を上げた。溶接棒の流通系列化に関しても神戸製鋼所を事例に詳細な分析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
戦後から現在に至るまでの酸素工業、産業ガス産業の展開について、酸素以外の分野で、エレクトロニクスなどの新規需要分野の登場に対応して、従来の酸素企業がどのような研究開発活動を展開したのか、また海外のメジャーの再編が日本企業にどのような影響を及ぼしたのかについてさらに検討していく。 また電気溶接機分野における技術導入から自主開発に至る動きを検討し、日本製品の特長、海外輸出に際しての課題等について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
他大学の図書館からの図書資料の取り寄せに際して、相互貸借運搬料が予定より少なかったため、626円を次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
図書資料複写費として使用する。
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