研究課題/領域番号 |
15K03583
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
伊藤 正直 大妻女子大学, 社会情報学部, 教授 (70107499)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 国際金融機関 / OECD/WP3 / BIS / G10 / ブレトンウッズ体制 / 大蔵省 / 日本銀行 |
研究実績の概要 |
本研究は、国際金融システムの維持や運用において大きな役割を果たしてきたいくつかの国際金融組織の機能と実態を歴史実証的に明らかにすることを課題としており、とくに1960年代に重要な役割を果たしたと考えられているG10及びOECD/WP3の検討に焦点を合わせている。前年の研究実績概要で述べたように、平成27年度はアメリカ公文書館に保存されているG10関係資料の分析とアジア国際金融市場のハブとして機能してきたシンガポール金融市場の分析を行った。平成28年度は、当初平成27年度に予定していたが、ヨーロッパ金融財政不安の影響で延期となったスイスバーゼルのBIS調査を、平成28年8月に実施し、1960年代から80年代にかけてBISが事務局となって行ったG10の会議準備資料、国際金融市場に関する実態調査、統計分析などの関連資料、OECD/WP3との調整関連資料などの収集を行うことができた。また、平成28年10月には、日本金融学会の共通論題「われわれは高橋是清から何を学ぶのか」にコメンテイターとして参加し、日露戦時国債の起債者としての高橋、昭和恐慌期における高橋財政の枠組み等の分析から国際金融と国内金融の接点を分析する上での比較視座の検討を行った。さらに、平成29年3月には、中国の国際金融市場への参入とその結果として生起している中国経済のバブル化についての国際シンポジウムに参加し、「バブル経済の中日比較と金融システムの安定」という論題で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成27年度に予定していたBIS調査を、平成28年度8月に実施し、主としてヨーロッパ側の国際金融市場や国際金融機関に対する認識を確認することができた。これに対応するアメリカ側の認識については、以前収集したアメリカ公文書館RG56資料によって確認することができたが、ただし、BIS資料とRG56資料との間で、不対応の部分があり、この補足調査が、現在必要となっている。この補足調査は、平成29年度に行い、成果の取りまとめに入りたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に述べたように、これまで収集してきた資料群をベースに、1960年代後半に生起した国際金融危機(1967年のポンド切下げに始まり、金プール制廃止、金の二重価格制採用、SDR創設、ドイツマルク切り上げ、フランスフラン切下げ等)に対するG10、OECD/WP3の理論的認識や具体的対応を検出することに努めたい。また、この作業を通じて、1960年代におけるこれらの国際金融機関の機能と制度的実態を解明することを試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度実施予定であったBIS調査が、ヨーロッパ金融不安の影響で延期となり、平成28年度8月に実施した。このため、平成28年度のアメリカ公文書館補足調査が、当該年度に実施できず、平成29年度に実施することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度夏にアメリカ公文書館調査を実施する。
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