平成28年度実施予定であったが、先方の事情等により延期となっていたアメリカ公文書館での補足調査を平成29年8月に実施し、公文書館職員の積極的支援もあって、平成28年8月に収集したBIS資料と、以前収集していた公文書館所蔵のRG56資料の不突合を解消することができた。また、平成29年8月、テキサス州オースチンのテキサス大学L.B.J.Libraryにおいて、1960年代後半ジョンソン政権下において国際金融事項を担当していたファウラー財務長官関連文書、デミング財務次官関連文書の閲覧・収集が可能となり、当該期のアメリカ政府内部における対外金融政策、とくに財務省の認識と政策対応に関する一次資料を新たに発見することができた。 平成29年8月のこのアメリカ調査により、1960年代後半におけるアメリカ政府内部における国際金融制度についての政策的認識の推移を実証的に確認することができ、OECD/WP3やG10での議論におけるアメリカとヨーロッパ諸国の対立の根拠やヨーロッパ諸国内部における国際金融システムのワーキング・メカニズムについての認識の差異、具体的には、オッソラグループ、トリフィン・グループ、エミンガー・ドイツブンデスバンク、BOEなどの認識とアメリカ政府の認識の差異がいかに全体の政策決定に反映していったかを、従来にない実証密度で明らかにすることができた。 この結果、本研究の目的である1970年代に比して相対的に未解明であり、政策決定過程がブラックボックスとなっていた1960年代の国際金融政策の決定過程が、その決定主体である公的なIMF、BIS、実質的にその決定を準備したOECD/WP3、G10、主要国の金融政策決定機関という重層的構造において解明することができた。
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