本研究は、ゼネラル・エレクトリック社で働いてきた全ての階層の人々に光を当て、同社の「人」の問題を軸とした通史を記述しようとするものである。その際、本研究は、企業を人びとの協働の場、あるいは「関係の束」として捉え、戦略と組織がどのような協働の仕組みを作り上げ、そこで人びとはどのような関係(社会関係)を取り結んだのか、戦略と組織の革新は関係をどのように変化させたのか、関係の変化が戦略と組織の変化をひきおこすことはあったのか、これらの問題の解明を軸として同社の全体像を示すことを意図して開始された。GEの創業時から1920年代までを中心に取締役、オフィサーレベルから工場長、営業部長クラス、各マネージャークラス、職長、基幹労働者のあり方とその相互関係について研究が進展していたが、関口定一氏の死去によって中断を余儀なくされた。 また、本研究は、一次資料をデジタル化された膨大な文章として収集し、それを縦横に検索することによって全体像に到達するという、経済史の新たな手法を開拓することも目的としていた。ゼネラル・エレクトリック社や関連企業・経営者団体・労働組合などの刊行物や組織内文書(Monogram、GE Review、Schenectady Works Newsなど)、経営者・管理者・技術者・労働者などにかんする伝記的資料や個人文書(Edwin Rice、Gerald Swopeなどのトップ・マネジメントの個人文書も含む)といった一次史料の収集と整理、電子化をすでに行ってきたが、さらに、本研究課題に関する数多くの新しい資料を発掘し、整理を行い、電子化した。このデータをもとに研究課題を解明することは十分できなかったが、収集されたデータはゼネラル・エレクトリックに止まらず、今後の20世紀アメリカ企業研究の発展のための基礎的な情報を提供するものとして、重要な意義を持っている。
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