研究実績の概要 |
20世紀前半の土地改良事業の地域内網羅的データベース作成による国際比較分析を進めるために、平成27年度は、主に以下の3つの作業を行った。 (1)富山県の土地改良事業の資料調査および分析 高岡市立図書館に所蔵されている富山県内務部 (1918,1920,1928,1933,1938)『耕地整理並開墾要覧』、および『富山県農会報』を調査し必要箇所を写真撮影し、データ分析作成の準備を進めた。 (2)近代の土地改良事業の前史として重要な、近世の土地改良事業について、以下の2つの国際学会で発表した。(i) 報告論題 The Development of Civil Engineering Projects and the Change of Kokudaka in Tokugawa Japan 学会World Economic History Conference(8月、京都)、(ii) 報告論題 The Development of Civil Engineering Projects and Village-Communities in Tokugawa Japan 学会11th European Historical Economics Society Conference 2015(9月、イタリア・ピサ)。近世の土地改良事業の担い手としての地域社会、村落共同体の意義を明らかにした。 (3)日本各地の土地改良事業についての同時代文献の整理をおこなった。その結果、各耕地の小作料の不平等が、耕地の交換分合を妨げていた大きな要因の一つであることが明らかになった。この点は、戦前・戦中には強調されていた視点だが、戦後の研究史では十分に注目されていない。今後は、小作料の改訂作業と土地改良事業に与えた影響にまで視野を広げて分析を進めていかなくてはならないことが明らかになった。
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