研究課題/領域番号 |
15K03590
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
齊藤 直 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (90350412)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済史 / 経営史 / 金融史 / 企業金融 / 資本市場 / 株式市場 / 所有構造 / 企業統治 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、両大戦間期に見られた「株主の法人化」現象について、その時期・経路・背景を詳細に分析する作業を通じて、戦前・戦時・戦後における企業システムの変容プロセスに関する通説に対して、一定の修正を加え、新たな歴史観を提示することを課題としている。 研究期間4年間のうち第2年度にあたる平成28年度は、(1)基礎作業の面で、①株主構成と株式市場に関する資料の収集とデータ整理作業、②株式担保金融に関する資料(各地の公文書館等に所蔵された銀行帳簿から得られる貸出先に関する情報)の収集とデータ整理作業を進めること、および、(2)分析面で、「株主の法人化」の時期・経路・背景に関する分析のうち、株式分割払込制度やM&A(その特殊な形態の1つが後出の「変態増資」)などの着手可能なテーマに関する分析を進め、研究成果の少なくとも一部を公表することを課題として研究を進めた。 このうち、(1)基礎作業の面については、株式担保金融に関する資料の収集とデータ整理作業の進捗はやや遅れたものの、株主構成と株式市場に関する作業を中心に、全体としては概ね計画通りに作業を進めた。一方、(2)分析面については、「株主の法人化」と関係のある具体的なテーマのうち、「変態増資」(M&Aの一形態)について、明治製糖の事例を分析した論文を学会誌『経営史学』に公刊するとともに、東京モスリン紡織の事例を分析し、明治製糖の事例との比較を行った論文を大学紀要に公表した。また、複数の「変態増資」の事例を比較分析した成果を、日本金融学会春季大会(武蔵大学)で報告するとともに、戦前日本における企業金融を規定した重要な制度である株式分割払込制度について、先行研究が十分に分析していなかった株価との関係から検証した成果を、経営史学会関西部会大会(阪南大学)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間(4年間)のうち第2年度にあたる平成28年度は、(1)基礎作業の面では、①株主構成と株式市場に関する資料の収集とデータ整理作業、②株式担保金融に関する資料の収集とデータ整理作業を進めること、および、(2)分析面で、「株主の法人化」の時期・経路・背景に関する分析のうち、着手可能なテーマに関する分析を進め、研究成果の少なくとも一部を公表することを課題とした。 このうち、(1)基礎作業の面では、資料調査に時間・手間を要する株式担保金融に関する部分にやや遅れが生じているが、株主構成と株式市場に関する資料収集とデータ整理作業は順調に進展している。一方、(2)分析面では、戦前日本の企業金融を大きく規定した制度的な特徴の1つである株式分割払込制度や、戦間期における特徴的な資金調達形態である「変態増資」などのテーマを中心に、学会誌への公刊論文(査読付)1本、その他論文1本、学会発表3回という成果を残すことができた。この面においては、研究期間の半分が経過した時点としては、順調な進捗状況にあるといえる。 以上を総合的に評価して、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の第3年度にあたる平成29年度は、前年度までの到達段階を踏まえ、(1)基礎作業としての資料収集・データ整理と、(2)「株主の法人化」の時期・経路・背景に関する分析の進展を継続しつつ、(3)前年度まで以上に成果を公表することを、課題として設定する。 このうち、(1)資料収集・データ整理については、前年度までに引き続き、①株主構成と株式市場に関する資料の収集とデータ整理作業、②株式担保金融に関する資料の収集とデータ整理作業を進める。このうち、②については、前述のとおり、各地の公文書館等に所蔵された銀行帳簿を調査することに伴う時間上の制約から、進捗にいささかの遅れが発生しているが、全体像を得ることよりも、まずは特定の銀行の事例に関する分析をパイロットスタディとして進めることを本年度の目標として設定する。 一方、(2)分析面については、①既に一定の進捗段階にある株式分割払込制度や「変態増資」といったテーマに関する分析をさらに進めつつ、②資料収集・データ整理の成果に基づいて、「株主の法人化」の時期・経路の全体像を概観するための暫定的な分析を進め、可能であれば一次的な分析結果を学会発表の形で公表できる段階に到達することを目標とする。 また、(3)成果の公表については、「株主の法人化」に関係する具体的な研究テーマのうち、既に成果の公表を進めつつある株式分割払込制度や「変態増資」といったテーマに関して、さらに分析を進めた成果の公表を論文・学会発表の形で進めるとともに、「株主の法人化」現象の全体像の概観に関する暫定的な成果を、年度末までに学会発表の形で公表することを目指す。なお、株式分割払込制度については秋季(経営史学会全国大会)に、「変態増資」については冬季(学会等は未定)に学会発表を行うことを予定している。
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