本研究は、アメリカの対日自動車政策の形成プロセス(1979~1981年)の分析を課題としている。特に日本による対米輸出自主規制の導入(1981年)をめぐる問題に焦点を当てる。この問題の解明のためには、①J・カーター政権期(1979~1980年)、②1980年大統領選挙期、③R・レーガン政権期(1981年)の3つの時期における対日自動車政策をめぐる動向を考察する必要がある。 本年度は、まずアメリカ議会図書館、国立公文書館において①と③の課題をめぐる資料調査を行った。特にカーター政権期の国内政策担当大統領補佐官であったS・アイゼンシュタット氏の個人文書の閲覧許可を得ることができたため、その精査を集中的に行った。そこから1980年7月~8月におけるインフォマールなルートを通じた日米交渉の存在と、それが妥結しなかった背景について検討を深めることができた。その成果の一部は、2017年4月及び2018年1月に海外から研究者を招聘し、実施した、国際セミナーにおいて公表した。前者の国際セミナーにおいては、③の課題と関わるレーガン政権とトランプ政権の貿易政策の比較及び、①②の課題に関連して執筆した論文草稿の検討を行った。当日の議論から論文草稿の改定に関する有益なコメントを海外研究者から得ることができた。後者の国際セミナーでは、本研究課題の時期における日米関係と現在の米中関係を比較する観点から海外の研究者のプレゼンテーションにコメントを行うとともに、その内容を基礎とした論考を執筆し、2018年中に公表する予定である。 また、こうした一連の研究成果を反映させた最新の欧米経済史の教科書を編集・出版した。
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