研究課題/領域番号 |
15K03593
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研究機関 | 桃山学院大学 |
研究代表者 |
伊藤 カンナ 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (30334999)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済成長 / イタリア / 戦後復興 / 開発計画 / 世界銀行借款 |
研究実績の概要 |
イタリアの1950年代の急速な経済成長である「奇跡の成長」において、南部開発投資計画と世界銀行借款が果たした役割を、主に世界銀行の資料から検討した。 イタリアでは、19世紀後半の建国以来、南部と北部の経済的社会的条件の歴史的な格差が存在した。南部は幅広い側面で深刻な後進性を保持し、国内の経済の二重性を是正するために、公的介入によって南部問題の解決が計られてきた。第二次世界大戦後も、南部開発計画が実施されていく。その目的は、南部の農業部門を競争的にし、技術革新や産業システムの地域的拡大を促進するとともに、為替市場でのリラの交換性を防衛し、国際的な自由市場でイタリア製品全体を競争的にすることにあった。1946年11月には南部での経済活動を研究、実験、促進するための官民の経済主体連合Svimezが創設され、そのローマ拠点とBI総裁室が1947-1950sのイタリアの経済政策の主要な選択の発案と決定の中心となった。1948年に、イタリア政府は世銀に、製鉄、水力発電、全国的電力網整備など11の産業プロジェクト融資を要請、世銀は融資先として、精密で信頼できる投資計画を準備しうるTVA型の専門公社の設立を求めた。既に予算相エイナウディ、イタリア銀行総裁メニケッラによって南部金庫の設立準備が進められており(1950年設立)、世銀総裁ブラックは長期借款供与の用意を表明した。1949年から世銀は慎重な融資審査を行い、1951年以降、7次に及ぶ借款が実現した。世銀借款は、イタリアに国際収支の危険な不均衡を生じさせず、投資計画で生じる追加輸入に必要な外貨の準備を認めるものであった。また、世銀初期のインパクトローンの希有な実例となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗のためには、一次史料の収集と検討が欠かせないが、2015年以降のEUにおけるテロ事件の頻発で治安が悪化し、資料収集が進捗していないこと、また、2016年6月以降、本研究の柱の一つである南部開発問題に関する史料が、イタリアの国家公文書館において閉鎖されてしまい、現在まで公開の兆しが無いことから、資料収集の見通しが暗いため。
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今後の研究の推進方策 |
世界銀行およびイタリア銀行を中心に、関連史料を収集し、分析する。得られた知見を研究会・学会で報告し、さらに論考を精緻化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
EU各国におけるテロ事件の頻発と、イタリアの史料館における公開史料の突然の閉鎖により、史料収集計画が見直しを余儀なくされたため。
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次年度使用額の使用計画 |
閉鎖された史料については、再公開を待ち、他の資料館の史料について、現地訪問と収集を予定している。
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