研究課題/領域番号 |
15K03593
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 カンナ 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (30334999)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イタリア / 南部開発 / 戦後復興 / 為替管理 |
研究実績の概要 |
今年度は、アメリカとイタリアの公文書館・史料館において、史料の調査と収集を精力的に行った。まず、世界銀行IBRD史料館において、世銀の1950年代のイタリア向け借款に関する資料を収集した。同借款はイタリアの南部開発の初期の資金調達であり、インパクトローンの内容を持った。すなわち、特定のプロジェクトだけ支えるのでなく、一国全体の経済にインパクトを維持するためのもので、投資の効果から引き起こされる国際収支の不均衡を克服するために外貨建ての借款を供与するものであった。これは、創始期の世銀内部で優勢だった「特定プロジェクト」のコンセプトに反するものであり、イタリア向け借款の実現までに世銀内でどのような論争があったのか、借款の内容を練り上げたローゼンシュタイン・ロダンらの構想がどのように形成されたのかを史料から明らかにしたいと考えている。そのため、イタリア側で南部開発計画の検討や世銀との借款交渉に当たった南部開発公社SVIMEZの史料館においても、関連史料の調査・収集した。現在、考察は端緒に就いたばかりではあるが、ローゼンシュタイン・ロダンとSVIMEZ、イタリア銀行、産業復興公社IRIの間には緊密な人的ネットワークが構築されていたことが確認できた。 また、戦後復興期のイタリアは、アメリカ輸出入銀行EXIM Bankからも借款を受けており、その交渉や審査に関連する史料をアメリカ国立公文書館とイタリアの融資受入れ機関イタリア動産金庫IMI史料館において、調査・収集した。IMI史料館のEXIM借款関連史料は公開されたばかりであり、検証する意義は大きい。加えて、イタリアが戦後から1950年代前半に行っていた為替管理に関する史料も得られており、現在、検証を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該課題の研究においては、イタリアおよびアメリカでの史料収集が極めて重要であるが、イタリア側での史料について、突然の開示中断や、現地の治安の悪化などがあったため、資料収集が非常に遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカの国立公文書館、世銀史料館、イタリア中央銀行史料館、南部開発公社史料館、イタリア動産金庫史料館などで戦後復興期から「奇跡の成長」期のイタリアに対する借款について、申請から審査、交渉、実施の過程を明らかにする。得られた結果は、研究会などで報告し、論文にして発表することで、他の研究者からの批判やご指導を仰ぎ、より精緻化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
イタリア国立文書館において調査を希望していた史料が公開中止となり、現在まで調査・収集のための出張を見合わせているため。
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