本研究の目的は,産業地域において競争の文脈が形成・変容する過程に関して経験的研究を展開し,産業地域で生起する経営現象の背後で働く社会機序を解明することである.主要な成果は次の3つである.(1)国内外の産業地域を対象に競争の文脈が形成・変容する過程を精緻に記述し,同過程に作用する社会機序に関して仮説的な知見を得た.(2)文脈群の振る舞いを数的に捉える解析手法を事例研究に適用し,産業地域研究に導入する技術的基盤を改良した.(3)産業地域における競争の文脈の理解に向けて,歴史的な文献類と取材・実地調査とを相補的に用いて時々の状況や背景を掴む歴史民族誌アプローチの方法論的特徴,利点,留意点を整理した.
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