ワン・ショット意思決定理論は以下の二段階意思決定アプローチから構成される。まず、第一段階では、基本事象の起こる確率と、もたらされる結果の満足度を選択要因とし、意思決定者のリスクに対する態度に従って、基本事象を選ぶ。なお、選ばれた基本事象を焦点事象と呼ぶ。そして、第二段階で、焦点事象がもたらす結果の満足度を最大にするような選択肢を決める。意思決定者の焦点事象の選び方によって、楽観的、悲観的、大胆、不安の4タイプの意思決定者に分類される。 ワン・ショット意思決定理論をベースにした数理モデルは、バイレベル最適化問題となり、ローワーレベル問題では各選択肢に対応する焦点事象を求め、アッパープレベル問題では焦点事象のもたらす結果に基づき、最適な選択を求める。しかし、この数理モデルでは、ローワーレベル問題はマクシミン最適化問題であり、アッパープレベル問題にはマクスマクスまたはマクシミンの目的関数がある。 このような特殊なバイレベル最適化問題では、ローワーレベル問題は非凸なおかつ微分不可能なので、最適解を求めるのは非常に難しい。これらの問題の特徴を考慮し、いくつかの仮定によって、最大エントロピー関数族を用いて、マクス関数を近似する規則化方法を提案した。これによって、バイレベル最適化問題は一般的な単一レベル最適化問題に帰着することができた。さらに、提案された規則化方法の数理的な性質を調べたうえで、新聞売り子問題に適用し、方法の有効性を示した。
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