研究課題/領域番号 |
15K03601
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
舘岡 康雄 静岡大学, 工学部, 教授 (00510463)
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研究分担者 |
泰中 啓一 静岡大学, 創造科学技術大学院, 客員教授 (30142227)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 経営組織 / 持続可能性 / パラダイムシフト / SHIEN / 幸福感 / 働き方 |
研究実績の概要 |
組織間における関係行動(協業、協力、協働、支援など)に、格子気体モデルを使うことは先進的である。協力や支援のメカニズムをより明確にするために、2体問題でシミュレーションを行い、海外ジャーナルに投稿した。一方で、現実と変数との関係などがついていないためこのモデルの経営への適用の限界も見えてきている。 切り離されたエージェントが結果を重視し、競争しながら成果を出すリザルトパラダイムから、エージェントが再び重なりを創って、その重なりで「してもらったり、してあげたり」しながら、互いの力を引き出し合って、成果を生み出すプロセスパラダイムに推移している。この原理を、広島と浜松に本社を置く一部上場会社2社の組織変容に適用した。1. 赤字問題 2. 職場構成員の関係の悪化 3. 機能横断不全、受け身体質という問題が1年ですべてドラスティックに解決した。昨年度SHIEN学の活動として取り組んできた中型病院の組織変容のメカニズムを再検証できた。これらの変容プロセスを現在纏めている。 山城経営研究所と連携し、上場大企業において、SHIEN(支援)原理がどのように働き方、人間関係、組織間関係、業績に影響を与えるかについて継続研究中。この成果を国内最大のHRカンファレンスで発表した。また、働く幸せと業績が両立している企業のメカニズムに関して質的な比較分析を4社で行ってきたが、両立している企業では、SHEINという関係行動を軸にマス・アイデンティティが確立されていることが明らかになった。 新たにモノづくりにおけるKAIZEN活動とSHIEN学の関係に関して研究をはじめた。 アウトリーチ活動として、SHIEN(支援)学会、SHIENアカデミー共催の合宿を北海道で実施。ビジネス分科会でSHIEN学普及の出版推進中。北海道、東京、静岡でSHIENアドバイザー、SHIENマスターの養成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関係行動を組織的に実験したり、解析することが可能な組織、一般社団法人SHIENアカデミーの活動が継続していることにより、研究のサポートが得やすくなっている。一部上場会社2社の組織変容にSHIEN学が適用されたことにより、組織内における利他的な行動によるWin-win関係の構築がどのように起こるかが把握できるようになった。今後ともタイアップしながら、SHIEN原理をさらに明らかにしていきたい。 また、山城経営研究所は経営学の立場から、協力してくれており、組織に利他的な関係行動がどのように作用するのか具体的に明らかになってきている。今後さらに連携を深めていきたい。 また、新たな領域として、日本が誇るモノづくりにおけるKAIZEN活動とSHIEN学との関係を明らかにする研究協力者を得ることができ、今後が楽しみである。
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今後の研究の推進方策 |
組織内における利他的な行動がもたらすWin-win関係と持続可能性、さらにそこに深く関わる企業文化、企業変容のダイナミズムが分かってきている。今後はこのダイナミズムを深め、現実の世界で力を引き出し合う関係を構築できるような方向性に舵を切っていく。また、利他的な行動を互いに引き出すためのマネジメントの要諦を具体的に纏めていきたい。 組織になれば、基本的に統制が必要になり、SHIEN学で提言するリザルトパラダイムに陥りやすい。しかし、これでは個々の構成員のモチベーションやコミットメントが下がり、成果がシュリンクしていく。イノベーションを生み出し活性化した組織や組織プロセスを実現するプロセスパラダイムが必要であるが、これを現実化した組織と組織マネジメントはまだないと言える。本研究の成果をベースに今後はこの分野にチャレンジする。また、政治の領域にもプロセスパラダイムの取り組み方を広げていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度はSHIEN学を深めるワークショップやデータ収集、解析が中心だった。専門家への聞き込みや議論が少なかった。その差額が生じている。29年度はそれらへ研究費を使っていきたい。
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次年度使用額の使用計画 |
上記に示したように、専門家への謝金に使っていきたい。
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