研究課題/領域番号 |
15K03603
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
秋山 高志 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (80457283)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネットワーク / 組織間関係 / 国際経営 / R&D / 自動車 / AI |
研究実績の概要 |
本研究は、自動車産業における研究開発の研究者間協働ネットワークを分析し、インパクトの高い発明における研究参加者の多様性が年々増していること、さらに、協働のイニシアティブが自動車メーカーからIT系の新興企業に徐々に移転している事実を考察することである。その際、ネットワークの全体像、中心性、媒介性、構造的空隙、構造同値、クラスターという特性に着目し、協働ネットワークの質的、量的な変化を計量的・客観的に分析する。これにより、自動車産業の研究開発のパラダイム・シフトを明らかにするとともに、そのパラダイム・シフトの中における協働のイニシアティブの源泉を解明することを目的とする。 平成30年度までに、自動車産業の研究開発を対象に産官学の研究者間のネットワーク構造を分析し、従来の自動車メーカーを中心とする研究開発から大学やベンチャー企業がイニシアティブを強く握る協働ネットワークへと変化し、インパクトのある業績が飛躍的に増加していることを確認した。これは、自動車産業の研究開発の協働ネットワークにおける重大な競争構造の変化と認識することが可能である。 平成31年度においては、これまでのネットワーク特性に視点を当てた計量的分析結果に対して、組織間関係論や組織行動論の既存のフレームワークを適用し、これらのフレームワークの発展の可能性を検討する。そして、その結果を、研究の集大成として国際学会や学術誌において報告することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画時においては、自動車業界の研究開発の協働ネットワークとサプライチェーン・ネットワークを分析し、ネットワークの構造特性から、資源依存、パワー関係、同質化(制度的同型化)、機会主義、制裁などの組織間関係論の視点から両者の形成原理を比較することに重点を置いていた。しかし、IT系新興企業がAIなどを武器に自動車業界の新規プレーヤーとなるに従い、自動車業界の研究開発における協働ネットワークに発生しているパラダイム・シフトに研究の重心が移行した。これに伴い、研究計画が当初の計画よりも遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、これまでの定量的分析の結果を、理論的に熟考する。その際には、資源依存、パワー関係、同質化(制度的同型化)、機会主義、制裁などの既存の社会ネットワーク理論の知見に加えて、組織間関係論や組織行動論の分析フレームワークも参照する。これにより、フレームワークの進化・発展の可能性を検討する。 結果については、準備が整い次第、国際ジャーナルにおいて順次発表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、筆者が本研究期間中に米国カリフォルニア大学バークレー校に客員研究員として赴任し、データの構築と統計分析を行う期間が1年間遅延したことによる。このため、研究成果の報告も予定を1年間遅れることになり、次年度に国際学会や学術ジャーナルで行う予定である。そのため、旅費や出版に伴う経費が次年度に移行した。
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