本年度は、日本企業間におけるエクイティ・アライアンスのうち、「共同出資(Joint Venture)」に関する実証分析を行った。共同出資会社は複数の企業が出資を行うことで設立されるが、その際、設立のメリットが出資企業間で異なることが先行研究より明らかとなっている。たとえば、2企業が共同出資会社を設立する場合、一方の企業にとってはこの設立は経営上のメリットを享受できる一方、他方の企業にとってはメリットがない、場合によってはコストのみが生じることが明らかとなっている。 本研究では、共同出資会社設立というアナウンスメントに対して、①出資企業の株主価値がどのように変化したのか、②その変化はどのような理由によって説明できるのか、について実証分析を行った。①については、約半数のケースにおいて、非対称的な株主価値の変化、すなわち一方の企業の株主価値が上昇するのに対して、他方の企業の株主価値が低下するという先行研究と同様の結果が得られた。つぎに、②に対する仮説として、レスキュー仮説(大規模で好業績の企業がそうでない企業を支援する一手段として共同出資会社を設立する)を提示し、同仮説が妥当する可能性があることを明らかにした。具体的には、大規模企業であるほど、あるいは収益性の高い企業であるほど、共同出資会社を設立する際に株主価値が上昇しない、あるいは下落することを明らかにした。さらに、共同出資会社設立以降、このような大規模あるいは好業績企業は共同出資会社設立を通じて「支援」した企業を買収するケースがあり、この場合には大規模あるいは好業績企業も株主価値を高めることができることも明らかにした。なお、この研究については、現在英文雑誌へ投稿中である。
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