研究課題/領域番号 |
15K03610
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
武田 寛 北九州市立大学, 大学院マネジメント研究科, 教授 (70405546)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コーポレートファイナンス / アメーバ経営 / 資金調達 / 資本構成 / 経営思想 / 意思決定 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、「投資行動」の研究を中心に実施した。アメーバ経営における投資の意思決定をコーポレートファイナンスの視点により分析した論文「企業投資の意思決定」では、以下の成果が得られた。第一に投資の意思決定に関するコーポレートファイナンスの論点を整理した。第二に企業の実際の意思決定に関する先行研究調査により、資本予算の投資評価手法は従来よりも範囲を広げて考える必要があることがわかった。第三にアメーバ経営の部門別採算制度において、社内金利が資本コストであるならば、アメーバ経営の意思決定は残余利益にもとづくものとなることがわかった。このように、アメーバ経営の投資意思決定をコーポレートファイナンスの資本予算の投資評価手法と比較して分析したことは、初めてのことであり、意義がある。さらに、アメーバ経営の意思決定は一連のプロセスの中のひとつであり、他のプロセスと連動していることから、コーポレートファイナンスにおいても、今後は、経営プロセス全体の中での投資評価手法の意義、特に投資の意思決定と業績評価との関係についても研究を進める必要があることがわかった。 またアメーバ経営の意思決定の前提には経営思想があり、この経営思想とアメーバ経営とファイナンスとの関係について、論文「Transformative connections between culture and finance」で明らかにした。この研究は、アメーバ経営の意思決定を経営思想という新しい観点から分析した点が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「投資行動」に関する研究は、(iv)アメーバ経営の投資行動をコーポレートファイナンス理論により分析する、(v) アメーバ経営の部門別採算制度で使われている「時間当り採算」が投資決定基準として、どのように使われているか明らかにする、(vi)アメーバ経営における「時間当り採算」を、NPV法や回収期間法など一般的な投資基準と比較して、その効果や効率を明らかにする、点に関して研究を進め、論文を公刊した。また、アメーバ経営の意思決定を経営思想という新しい観点から分析した論文も予定通り公刊した。 しかし、平成29年度に計画していた「資金調達と資本構成」に関する研究は、予定通りには進まなかった。これは、大学での管理運営業務の多忙に加え、研究によって、従来のコーポレートファイナンス理論では説明できない事例が発見されたため、管理会計学や経営哲学等、当初予想していたよりも幅広い領域の先行研究調査や内容検討が必要となり、研究遂行に想像以上に時間を要したためである。 以上の進捗状況から区分(3)とした。
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今後の研究の推進方策 |
「資金調達と資本構成」に関する研究は、(ii)アメーバ管理会計システムが資金調達と資本構成に与えている影響や、(iii)アメーバ経営における会計原則を含む経営哲学(フィロソフィ)が資金調達と資本構成に与えている影響について、国際共同研究を進め、研究発表する予定である。 また、平成30年度は、3つのテーマの中で、「ペイアウト(配当と自社株買い)」の研究を行う。具体的には、(vii)アメーバ経営におけるペイアウトをコーポレートファイナンス理論により分析する、(viii)アメーバ管理会計システムが、ペイアウトに与えている影響について明らかにする、(ix)アメーバ経営における会計原則を含む経営哲学(フィロソフィ)が、ペイアウトに与えている影響について明らかにする。 なお、「ペイアウト」の研究は、「資金調達と資本構成」に関する研究と関連が深いため、研究の進展の中で、前述の国際共同研究において総合的に研究することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、主に、研究全般に関わる専門的知識の提供に対する謝金、資料の提供や閲覧に関する費用、資料整理のための研究補助者への謝金等が生じなかったためである。 今後の使用計画は、以下のようになる。 1、ファイナンス関係図書・アメーバ経営関係図書。2、英語論文の校閲。3、調査研究・成果発表に関わる旅費。4、パソコン関連の消耗品など。
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