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2015 年度 実施状況報告書

多角化の経済的価値:従業員の視点からの実証分析

研究課題

研究課題/領域番号 15K03617
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

牛島 辰男  慶應義塾大学, 商学部, 教授 (80365014)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード多角化 / コインシュランス効果 / 従業員給与 / 経営者報酬 / 資本構成
研究実績の概要

本研究は事業の多角化が企業収益を安定化させる効果(コインシュランス効果)が従業員と経営者に持つ意味を、特に従業員給与と経営者報酬に及ぼす影響に注目して分析をするものである。コインシュランス効果は負債の調達、利用をはじめとする財務政策にも重要な意味を持つため、多角化と財務政策(資本構成)の関係もあわせて分析する。
平成27年度においては従業員給与と資本構成のデータの整備を行うと共に、計量分析に着手した。両分析ともに基礎となるデータは有価証券報告で開示されている事業セグメントデータである。多角化企業は複数の産業領域で活動するため、専業企業との比較が容易ではない。このため多角化企業の事業セグメントと同じ産業の専業企業をマッチさせ、専業企業中央値のセグメント加重平均に対する比率として計算される超過指標を、従業員給与、レバレッジ(有利子負債÷総資産)、流動性比率(現金保有÷総資産)について算出した。サンプルは2001~2010年に株式公開していた全ての日本企業(金融機関除く)である。
これらデータに基づき、従業員給与と財務政策の規定要因としての多角化の役割を計量的に分析し、論文としてまとめた。従業員給与の分析は、多角化の効果が従業員の交渉力によって変わるという仮説に基づく。従業員交渉力の指標として労働組合の有無を用いた実証分析からは、この仮説を支持する結果が得られた。財務政策についても、コインシュランス効果を通じて、多角化がレバレッジと現金保有レベルの決定に強い影響を及ぼしていることを示す結果を得た。
これら分析の結果は国内の大学・研究機関で報告すると共に、従業員給与の分析については海外の学会でも発表を行い、今後の改善のために有用な示唆を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

財務政策の分析については、既に研究成果を日本語と英語の論文としてまとめることができている。日本語論文は、平成28年度に刊行予定の書籍の一章として出版される予定である。英語論文もディスカッションペーパーとして既に公開されており、若干の加筆・修正を行った後に、国際ジャーナルでの出版に向けて投稿を行う予定である。
従業員給与の分析については、経営者報酬の分析も一部含む形で論文としてまとめたものを、海外の学会(Western Economic Association)にて報告した。その後、従業員給与の分析に特化した論文を、ディスカッションペーパーとしてまとめており、国内外での研究報告を通じて完成度を高めていける段階に達している。この論文についても、平成28年度中に国際ジャーナルに投稿することを予定している。
経営者報酬の分析が当初計画に比べ遅れているものの、全体としては当初計画をやや上回るペースで進展できているものと考えられる。

今後の研究の推進方策

平成28年度は財務政策の論文(英語版)の投稿を行う過程で、必要な修正を行っていくことが第一の課題となる。なるべく年度中の採択を目指したい。
従業員給与の論文については、引き続き分析を深めていくと共に、国内外の学会や研究会で報告を多く行うことで、改善点を明らかにしていきたい。既にAsian Finance AssociationとWorld Finance Conferenceでの発表が決まっているほか、Paris Finance Conferenceでも報告の予定である。
経営者報酬の分析については、不足しているデータの取得を平成28年度中に行い、データ整備を進める予定である。分析期間においてはコーポレートガバナンスにかかわる多くの制度変化があったため、報酬指標の作成が当初考えていたほど簡単ではなく、工夫が必要であることが分かった。このため、経営者報酬を専門とする研究者と共同で分析、論文執筆していく方向である。

次年度使用額が生じた理由

経営者報酬データの購入を分析の進捗具合を考慮し延期したこと、年度途中に所属大学が変わったため、リサーチアシスタントの採用や夏季の学会報告を見送ったことが主な理由である。

次年度使用額の使用計画

経営者報酬データの購入、事業セグメントデータの追加取得を予定通り進めるほか、海外(米国、タイ、フランス)の学会における研究成果発表のための旅費が主な使用用途となる。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)

  • [学会発表] The effects of diverfication on employee and executive pays2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Ushijima
    • 学会等名
      World Finance Conference
    • 発表場所
      New York (United States)
    • 年月日
      2016-07-29 – 2016-07-31
    • 国際学会
  • [学会発表] The effects of diverfication on employee and executive pays2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Ushijima
    • 学会等名
      Asian Finance Association
    • 発表場所
      Bangkok (Thailand)
    • 年月日
      2016-06-26 – 2016-06-28
    • 国際学会
  • [学会発表] The effects of diverfication on employee and executive pays2016

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Ushijima
    • 学会等名
      Western Economic Assoiciation
    • 発表場所
      Singapore
    • 年月日
      2016-01-07 – 2016-01-10
    • 国際学会
  • [学会発表] Diversification, organization, and value of the firm2015

    • 著者名/発表者名
      Tatsuo Ushijima
    • 学会等名
      Western Economic Assoiciation
    • 発表場所
      Honolulu (United States)
    • 年月日
      2015-06-28 – 2015-07-01
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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