研究課題
本研究の課題は日本企業のIT活用の課題発見と活用の促進のための知見を抽出することである。2015年度においては、まずは課題を発見するというところに焦点を当てた研究を行った。他方でIT活用においては基本的には情報をいかに有効に収集し、活用するかというところに究極の問題があるということを認識し、活用のための研究をおこなうということがIT活用の促進に資するという前提のもとに規範的な情報活用の理論的知見を体系化する研究も平行的に進めた。それらの内容は、(1)IT活用の課題発見の研究:ドイツ、スペイン、オーストリアなどの国の研究者と共同で近年大きな注目を集めているIndurstry4.0およびIOTの利用状況とそれらへの取り組みの姿勢を調査し、そこからIT活用の課題を抽出する作業を行った。課題として、今後のIT活用が経営の強化を図る規範的風土の存在の有無と関わるという仮説を立てることができた。(2)情報活用の規範的枠組みと知見の研究:情報は不確実性への対処という視点が重要という認識の下で、それを理論的に扱う統計学に基づいてモデル分析を行った。そこでは、サプライチェーンのプロセスの設計と不確実性の削減の事例をモデル化し、分析を行い、プロセスの設計が不確実の大小に影響する可能性を明示化した。これら(2)の側面の研究成果は、2015年では2つの学会報告で発表した。さらに2016年度でも上記2つの研究は3つの学会および1つの論文として発表することを予定している。
2: おおむね順調に進展している
IT活用の状況の調査では2015年においてすでに日本企業の調査は完了している。回答率は20%前後でまず成功したといえる。それらのデータ分析では、他国のデータに関してはまだ入手できていないが、日本企業のデータの分析からは、IT活用には経営における風土としての基本姿勢の影響が多大であるという知見は得ている。Industru4.0やIOTはIT活用を包括した概念であり、それらの取り組みは経営におけるIT活用そのものを左右する。その意味では、ITを活用できる経営風土の構築ということに研究焦点を向けることができた。他方、情報活用のための不確実対応のための規範的知見に関する研究では基本的モデルを構築でき、予想通りの知見を得ている。さらにこの方向でモデル化を推進し、Industry4.0やIOTにおいて大きな柱になっているアナリティックスに関する知見を拡充できる見通しができた。
2015年度の研究を踏まえ、2つの研究焦点をより統合化していくことが経営におけるIT活用の課題に接近できる。Industry4.0およびIOTへの取り組みを左右する経営風土の内容に関する知見のさらなる創造は、調査に協力してもらった企業へのインタビュー調査を行ってさらに望ましい経営風土の特性や意味合いを明らかにすること、今までの経営理論との関わり合いを理論的に追求することで進めることを企図している。情報活用の規範モデルの研究では、不確実性を削減するための考え方として、経営プロセスの設計、運営における問題と、どのような情報を収集・分析していけば不確実性そのものを少なくすることができるのかという2つの視点からさらなるモデル化の研究を行う予定である。経営におけるIT活用力は、日々の経営オペレーションにおける情報のつなげ方、利用方法という側面と、アナリティックスに代表される不確実性をいかに削減し、より良い意思決定につなげるかという側面があいまって高められるという基本命題により接近することが今後の研究焦点になる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
The 6th International Symposium on Operations Management and Strategy 2016 (ISOMS 2016) June 10-12, 2016, Kobe, Japan
巻: 6 ページ: in printing
Proceeding VINCI '15 Proceedings of the 8th International Symposium on Visual Information Communication and Interaction
巻: 8 ページ: 170-173
10.1145/2801040.2802138
巻: 8 ページ: 146-147
10.1145/2801040.2801042
学習院大学経済論集
巻: 52 ページ: 49-63
http://vinci-conf.org/2015/program.html