研究課題/領域番号 |
15K03620
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
田中 信弘 杏林大学, 総合政策学部, 教授 (00245458)
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研究分担者 |
DRUMMOND Damon 立命館アジア太平洋大学, 国際経営学部, 准教授 (30341613)
宮川 満 立正大学, 経営学部, 教授 (30257167)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ソフトロー / エンフォースメント / CSR / 非財務情報開示 / エンゲージメント / ステークホルダー / コーポレート・ガバナンス / 機関投資家 |
研究実績の概要 |
本研究は、ハードローおよびソフトローによるCSR情報の開示フレームワークの世界動向を視野に入れ、とりわけソフトローとしてのCSR国際規格の有効性を検討することが目的である。その際、CSR国際規格の有効性を分析するフレームワークとして、①「エンフォースメントの達成についての検討」と、②「ステークホルダー・エンゲージメントの機能」についての検討により、情報開示をめぐる企業とステークホルダー(投資家やNGO等)双方のエンゲージメント活動の展開を具体的に明らかにすることが課題である。 本年度は、ステークホルダーとしての機関投資家に注目し、彼らによって推進されたイニシアチブであるCDPの有効性について、学会発表と論文執筆を行った。その際、ロンドンのCDP本部やCDPジャパンを訪問し、現状動向についてのインタビューを行った。 また次年度に向けて、コーポレート・ガバナンスにおけるソフトローの有効性を検討するために、英国財務報告評議会(FRC)、国連PRI、東京証券取引所ロンドン事務所、スウェーデン政府年金基金Ethical Councilなどを訪問し、機関投資家の対応をめぐる新動向についての情報収集を行った。 研究成果としては、日本経営倫理学会で「ソフトローとしてのCSR国際規格の有効性」という論題で発表を行い、それもとにした論考「ソフトローとしてのCSR国際規格の有効性をめぐる分析フレームワーク試論」を執筆し、査読を経て学会誌に掲載された。またCSRをめぐる現代的理解を促す著書『よくわかる企業論』(ミネルヴァ書房)に執筆する機会があり、CSRの理論と実態を体系的に論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、欧州(イギリス、スウェーデン)におけるCSR・コーポレート・ガバナンスの関係機関を訪問し、インタビューおよび意見交換を行うことができた。その見聞を含めて、研究フレームワークの構築をすすめ、学会発表を行うとともに、学会誌での論文掲載を行うことができた。科研費2年目の本年度に、研究フレームワークを深化させたものを論文として発表できたことは研究課題の進捗状況として良好である。 また次年度以降を見据え、CSRとともに、コーポレート・ガバナンスの考察に研究視点を拡げることができた。その作業を行うために、イギリスのコーポレート・ガバナンスを管轄する重要組織であるFRCにおいて比較的長時間のインタビューを行った。また、政府系ファンドとしてESG投資を推進するスウェーデンの政府年基金を訪問し、コーポレート・ガバナンスにおける新進的な動きをフォローすることができた。これらの研究調査には、今後の研究の進展のために有用であった。
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今後の研究の推進方策 |
科研費申請時の研究計画に基づき、CSRに関係する国際機関、政府機関をはじめ、企業、投資家団体、NGO等を訪問し、インタビュー調査を進め、課題の把握に努めていきたい。 次年度の研究課題は、企業と投資家やNGOとの間で展開されるエンゲージメントの諸課題を明らかにし、研究フレームワークに基づく見方を体系化していきたい。また、イギリス・コーポレート・ガバナンスにおける新動向を学会の「統一論題シンポジウム」において報告する予定があり、執筆中の論考をもとに報告準備を進めるとともに、同シンポジウムから、イギリス以外の国々との比較考察の知見を深めていきたい。 なお、本科研費プロジェクトの終了後に、著書刊行を準備していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
書籍の購入を次年度にまとめて行うこととなった
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に使用額28,446円を、書籍購入費用として活用したいと考える。
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