Routledgeより刊行されたR. E. Riggio(ed.)What's wrong with leadershipの7章"Are Leadership Theories Western-centric? Transcending Cognitive Differences between the East and the West"として,リーダー個人およびリーダーシップという現象に対する期待が,東西で異なることを論じた。物事の原因は実のところさまざまであるが,特に原因を個人に求めようとすることは,「基本的帰属の誤り」と呼ばれ,西洋の方が東洋に比べ顕著であることが明らかにされている。つまり,リーダーシップに対する期待は西洋社会の方が強いと言える。これは,期間中に数度参加した研究会での成果でもある。 また,リーダーシップの成果である戦略への過剰期待について,富士フイルムの2000年から2017年ごろまでの事業構造の変遷を事例に考察した。結果は,日本経営学会で「富士フイルムは言われている意味で戦略的だったか?」というタイトルで報告した。同社は,卓越したリーダーシップの結果,主力事業の消失から事業転換を成し遂げたように見えるが,実際のところは,有効な戦略を見いだせずに蓄積された豊富な現預金が,計画的戦略ではなく幸運の賜物の富士ゼロックスの買収を可能にし,財務的混乱を回避することに役立った。化粧品のような新事業の勃興は主力事業の消失には遅すぎるのである。 新たに,ドイツ・ケムニッツ工科大学のマイケル・ノールが主導する国際比較研究に参加し,組織における沈黙について,データの収集を行った。 延長期間を含め4年の間に,リーダーシップに対する過剰な期待が生じるメカニズムが,認知メカニズムに基づき,文化及び,おそらくは制度的期待の影響を受けることを明らかにした。
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