最終年度は、申請テーマの組織のモメンタムのメカニズムの実証に関する具体的な対象であった化学企業の爆発事故の研究が、前年度投稿した組織科学に査読論文として掲載された。そのため、最終年度は本研究テーマの長期的な継続のために、対象を広げて複数の研究を行った。その結果、多くの研究を新たに開始しただけでなく、関連研究の国際学会発表や、経営情報学会よりAIS関連国際発表奨励賞をいただいた。また、研究成果の普及のために、中央大学で2件の招待講演をおこなった。 今年度着手した研究は、組織のモメンタムのメカニズムが、産業や時代、地理空間による変化を実証するためのものである。データは、化学産業の原材料、化学産業の技術の導入と導出、日本映画の制作委員会、江戸時代の蘭学者の師弟関係といったネットワークデータを新たに収集した。新たな手法は、従来利用したネットワーク分析ソフトウェアに比べてグラフィック性能が高く、昨年度導入したGephiのより高度な利用や、新たに地理空間の変化を多変量解析するためにArcGISを用いた地理空間加重回帰分析、共分散構造分析、テキストマイニング、機械学習によるデータ分類に取り組んだ。 その結果、次の研究が今後の知識ネットワークが組織のモメンタムに与える影響のメカニズムに関する研究として有望なテーマと考える。①化学産業における原材料供給と技術導出入ネットワークが爆発事故に与える影響、②日本映画の制作委員会のネットワークがイノベーションに与える影響、③江戸時代のデータを用いた、地理的・空間的特性を考慮した知識ネットワークが藩のパフォーマンスに与える影響。 上記の研究は、これまでの化学産業を対象とした研究をさらに発展させるだけでなく、映画産業というまったく異なる産業でも同様の検証を行い、さらに江戸時代という異なる時代を対象とすることで、今後は本研究成果の発展を目指す。
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