現在、欧州においてSTS securitisationの基準が確立し、2015年5月30日、このSTS要件に関して議会で合意が得られ、2019年1月には導入される予定である。今後は、STS要件を満たすもの、もしくは満たさない証券化商品が組成されることになる。これにより、その組成がシンプルとなると同時に、裏付け資産の内容に関して透明性が高まるとともに標準化された金融商品が誕生することになる。 本研究では、STS securitisationとは何かに関してこれまでの経緯を整理するとともに、その証券化商品が誕生した経緯について考察した。さらに今後、STS securitisationはどのような方向に向かうのかについて概観するとともに、市場の関係者はこのSTSについてどのような見方をしているのかについて検証した。また2017年10月26日、欧州議会で、STSの要件を満たした証券化商品を組成した銀行に対し、自己資本比率規制について優遇することが採択されたことを受け、証券化商品市場の今後の期待について検討した。 証券化という金融技術は、活用の目的や手段によって意義があるものである。本来であるならば、将来、必ずキャッシュフローを生み出す健全な資産を裏付けに証券化商品が組成され続けられるべきであったことは言うまでもない。2019年1月にSTS securitisationが導入に至るまで時間が掛かるが、STS要件を市場関係者、特に投資家に深く理解させる必要がある。このことにより証券化商品の信頼性を回復させることができると同時に、投資家の購買意欲を高めることができる。さらに、金融危機の際にも問題としてあげられていたセカンダリー・マーケットの育成が必須になるであろう。このようなことをクリアすることができるのであれば、STS securitisationは定着するという結論に至った。
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