本研究の目的は、第1にITベンダー企業との価値共創によってITユーザー企業がどのように経営を高度化するかについて事例研究に基づいて解明することである。第2に上記事例研究と海外先進事例の考察を通した、情報サービス価値共創を促進する情報循環プラットフォームの構想である。 平成30年度には、上記目的1について国内の大手中堅システムインテグレーターやERP(統合パッケージ)ベンダー、およびユーザー側の業界団体へのインタビューや事例研究を通して、ユーザー企業の経営高度化に供する要件について整理した。この間、所属機関から海外研究機関に派遣された機会を利用し、海外研究者と議論を深め、研究対象の電子商取引への拡張など、事例研究への貴重な示唆を得た。同時に、国際学会ICISなど、国内外の経営情報学関連学会におけるサービス科学のトラックにおいて、さまざまな分野ににわたるサービス科学の先進事例に関する情報収集を行った。目的2については、上記の事例研究の過程で収集した個別プロジェクトの特性について整理したデータベースを試作し、定点観測ツールの基盤を整備した。これらの成果について国際学会ML/TIIMへ投稿し受理された。 さらに、本研究の対象を電子商取引に広げて、マーケットプレースを提供するサービス供給側のプレイヤーと、スマートフォンなどモバイル環境を利用してサービスを享受する一般ユーザーの間にある技術受容の関係性について、インドネシアでの実証分析結果を取りまとめて海外の学術論文誌に投稿中である。
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