本年度は,前年度までで完了できなかった調査結果の分析と,最新のASEAN経済共同体に関する情報を加えた考察を行った。 本研究ではインタビュー調査とアンケート調査を行なったが,本年度,その結果を分析したところ,シンガポールやタイの地域統括マネジメントの実態が浮かび上がってきているものの,それらはASEAN地域全体を対象とした統括マネジメントが行われているのか,あるいは産業集積がある国だけで統括マネジメントが行われているのか,という統括マネジメントについて疑問が出てくることとなったことからさらなる考察が必要だと考えている。 また,ASEAN経済共同体の構成国の状況についても情報収集を進め,ASEAN経済共同体の進捗状況を確認した。この結果,ASEAN経済共同体の進展は見られるものの,個々の国々の事情が異なることや,国内インフラの整備の状況が大きく異なっていること,さらには政府の経済政策の違いにより,工業化が進み経済共同体の一角を担うようになってきている国と,まだまだASEAN経済共同体の一角になりきれていない国などがあることがわかった。 総括すると,地域統括本社の機能については統括マネジメントがASEAN地域全体に及ぶものの,実質的には機能は限定的にならざるを得ないこと,また,機能についての高度化はASEAN経済共同体の創設はなされたものの,まだASEAN経済共同体の実態が大きく動いているものとは言えないことから,今後のASEAN経済共同体の動きを見つつ,地域統括マネジメントについても考察が必要になっているとの結論に至った。
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