研究課題/領域番号 |
15K03649
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
清水 洋 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (90530080)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イノベーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、汎用性の高い技術(General Purpose Technology)の発展に親組織からのスピンアウトと人材の流動性がどのような影響を与えるかを考察することにある。汎用性の高い技術は、産業や経済全体への波及効果が極めて大きい。しかし、そのような技術は生み出された時点ではまだ未成熟である。大きな波及効果を生み出すためには、補完技術の開発とともに、その後の累積的な改良が必要になる。このプロセスは長期的な時間を要するものである。しかし、そのプロセスにおいて、能力の高い技術者や科学者がその技術を応用して新しいサブマーケットを開拓するために親組織からスピンアウトする場合がある。そのような場合には、新しい用途の開発は進むものの、その基になる汎用性の高い技術の累積的な改良が進まなくなる可能性がある。 平成28年度には、これまでに分析を蓄積してきたレーザーに関して分析を深めた上で研究発表を行った。さらに、これまでの研究発表へのフィードバックを反映させて、論文を執筆し、国際査読誌へ投稿した。新聞記事の執筆も行った。USPTOの特許の発明者の情報から、新たに発明者が具体的にどこの組織からどこの組織に異動しているのかを特定するためのデータベースを構築して、異動をより具体的にレーザーの分野で特定した。また、これまでは、分析の対象としては、レーザー、フィルム技術、タービン、ナノテクノロジーを想定してきたが、これまでの研究に対するフィードバックを受けて、レーザー以外の分析対象についての適切性について改めて検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的には全体として順調に進展している。ただし、レーザー以外に分析対象として想定していた技術領域については再考している。その理由は、発明者の流動性を見る際に、単に流動している程度を見るだけでなく、どのような組織からどのような組織へと異動しているのかを見ることが大きな重要性があるという指摘があったためである。発明者の異動をより具体的に見るためには、一つ一つの特許を見ていかなければならない。そのため、大きな時間がかかることが想定される。そこで、分析対象の技術領域について、適切性について改めて検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度には、大きく次の2つを行っていく。第1は、これまで行ってきたレーザーから、人の流動性と汎用性の高い技術の累積的な改良、そして新しいサブマーケットの開拓の間の関係についての分析をさらに進めて行くことである。第2は、技術領域を再考した上で、具体的に発明者がどのような組織からどのような組織へと移動しているのかのデータの構築、整理を行うことである。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定していた謝金の支払いが生じるデータ収集・整理の一部を次年度に回したため、次年度使用額が生じている。これは、分析対象を再考していることが原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
分析対象と再考した上で、発明者の異動を特定するためのデータベースを構築する上での謝金として使用する計画である。
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