本研究の目的は、汎用性の高い技術(General Purpose Technology)の発展に親組織からのスピンアウトと人材の流動性がどのような影響を与えるかを考察することにある。汎用性の高い技術は、産業や経済全体への波及効果が極めて大きい。しかし、そのような技術は生み出された時点ではまだ未成熟である。大きな波及効果を生み出すためには、補完技術の開発とともに、その後の累積的な改良が必要になる。このプロセスは長期的な時間を要するものである。しかし、そのプロセスにおいて、能力の高い技術者や科学者がその技術を応用して新しいサブマーケットを開拓するために親組織からスピンアウトする場合がある。そのような場合には、新しい用途の開発は進むものの、その基になる汎用性の高い技術の累積的な改良が進まなくなる可能性がある。 平成30年度には、これまで構築してきたスピンアウトと人材の流動性、そして特許のデータを接合したものを基に分析し、その結果を書籍として発表するための執筆を行ってきた。平成30年12月には英語の書籍としての執筆を終わり、1月以降はその微修正を行った。また、書籍の執筆と並行して、分析結果をワーキングペーパーとして発表した。さらに平成30年12月以降は、平成29年度に投稿した論文の実証面を精緻化させた分析を進めた。この実証論文は平成31年3月に基本的な分析を終えており、令和元年7月にインドで行われる国際コンファレンスで発表が予定されている。
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