本研究では、航空機関連企業と宇宙関連企業のイノベーション創出や成長プロセスを把握するとともに、企業により成長に差が生じた要因を考察した。具体的には、ブラジルのエンブラエル、カナダのボンバルディアの航空機企業のイノベーション創出メカニズムや成長プロセスの分析を昨年に引き続き行った。さらに、自動車産業から航空機産業に参入した本田技研工業と、中国航空工業集団公司(AVIC)の子会社を通じて買収されたシーラス・エアクラフトの発展プロセスについて研究も行った。その際、先行研究を整理し、各研究の貢献と限界を評価し、インタビュー調査などで一次データを収集しながら、分析枠組みを提示した。宇宙産業に関する研究は、文献研究やインタビュー調査を行うににとどまったため、今後も継続して研究を行っていく。 航空機産業研究において、戦後から現在にいたる長期間の企業レベルの戦略行動を分析した研究はほとんど行われておらず、また、本研究の対象である100席以下の航空機であるビジネスジェット機やリージョナル機に焦点を当てた研究はさらに少ないのが現状である。これまでの研究において、航空宇宙産業に参入する各国企業の戦略行動の国際比較研究を行い、既存の研究では十分に取り組まれてこなかった課題に取り組むことができた。
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