研究課題/領域番号 |
15K03657
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
原 拓志 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60252756)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 安全 / 製品開発 / 自動運転 / IoT / 技術の社会的形成 |
研究実績の概要 |
安全な製品を開発するための技術経営について、関連する先行研究を収集、精査し、それらの論点の整理を行った。特に最近20年間の経営学周辺領域の関連研究については網羅的に収集を図り、その状況を調べた。また、その研究過程において、近年、自動車の自動運転やIoT(the Internet of Things)の開発が急速に進み、それに伴い製品のデジタル化、スマート化、ネットワーク化が進んでおり、そのような状況の下での製品の安全について見直しが喫緊の課題だという認識が得られたので、自動車安全、自動運転やIoTの歴史や現状、今後の課題などについても文献や見本市、セミナー参加等によって情報を収集した。これらを「技術の社会的研究アプローチ」の枠組みによって分析し、今後のエンピリカルな研究のための具体的課題を明確化した。こうした初期的な研究成果の一部を論文にした。その論文「安全と製品開発に関する試論」は2016年7月に発行予定の『国民経済雑誌』「特集:日本企業の技術・製品開発研究の諸相」に所収されて出版されることが決定している。また、研究の過程でまとめた技術経営および工業経営の学問的・実践的動向については、2015年8月29日に明治大学にて開催された工業経営研究学会の全国大会統一論題セッションで報告した。その内容を論文化した「日本の工業経営の課題-イノベーション研究の視点から-」は査読を合格し同学会の学術誌『工業経営研究』の30号に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にあった先行研究の渉猟や論点の整理については概ね計画通りに進めることができた。それに関する論文も執筆し公刊待ちの段階であり、現在関連の事例研究を含んだディスカッションペーパーも執筆中である。具体的なエンピリカル研究の課題も明らかにすることができ、その分析枠組みである「技術の社会的形成アプローチ」の適用の仕方も構築した。ただし、海外の研究者とのディスカッションは、海外出張のタイミングが来年度となったので、来年度に持ち越した。しかし、2016年4月からエディンバラ大学に滞在し、同大学の研究者とディスカッションをするとともに、研究会への参加や報告をすることがすでに調整できているので、研究の進展に支障はない。また、事例研究については、研究途中に自動運転やIoTの進展を研究の視野、対象に入れるべきだと確信したので、その関係のフィールドワークを今後重点的に行う予定である。研究対象とする企業については現在探索中であるが、これまでに自動車企業M社を訪問して協力者を得ることができた。また、当初からの医薬品や鉄道車両についても協力者を得ているので、それらも合わせてフィールドワークを進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、4月から7月にかけてエディンバラ大学に滞在し、同大学のRobin William教授、Donald MacKenzie教授、Graham Spinardi上級研究員らと本研究についての意見交換を行うとともに、同大学のScience, Tehnology and Innovation Studiesの研究会に参加し、報告もするなど、海外の一流研究者との交流を通して研究のレベル向上を目指す。また、現地において関連研究の資料収集も図り、分析枠組みのさらなる洗練を図る。 帰国後は、事例研究を進めるため産業ごとに複数の企業を選んで、製品開発に携わる人々を中心に半構造的なインタビュー調査を実施する。その際、新たに自動運転やIoTへの取り組みをしている企業を積極的に探索し、それらへの調査に特に力を入れる。事例研究の結果は、分析枠組みや仮説的な理論に照らし合わせ、複数事例を比較して共通点や相違点を整理する。そのうえで、仮説的理論の見直しも行う。こうした複数事例間の比較分析と理論的考察をもとに、安全な製品の開発のための技術経営についての新たな知見を導き出し、学会報告や論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数として生じた。無理に使い切る必要はないということなので次年度に回したい。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費に合算して使用する計画としている。
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